質問項目:「一番良かった/楽しかった/面白かったと思えることはなんですか。」(全体アンケートからの引用) □一番良かった:友達に知り合った。楽しかった:一緒に勉強する。 □クラスの雰囲気がとてもよかった。 □先生たちは親切にして,まじめで教えてくれた。 □みなさん,先生とクラスメートと一緒に勉強すること。 □みんなで授業中に自由交流することです。 □新聞作り(*グループで行う活動)。 (合計 6 コメント) 上記 6 つのコメントからは,「話す」活動との関連性は直接的には見受けられないが,「一緒に勉強する」「自由に交流する」「グループ活動」などは,「話す」ことを抜きにしては成り立たない行為や活動であると考えられる。 以上のように,15 コメントのうち 14 がいずれも「「話す」活動」か「学習者同士,学習者と教師とのつながり」,または両方に関わるものであり,「関係性の欲求」と「話す」活動の関連性を強く示唆していると考えられる。 ここで教師が学習者との関係性において,どのように学習者の学習意欲を高めていけるかについて考えたい。Reeve(2002)は,教師は学習者とのやり取りの中で,「学習者の声にもっと耳を傾けたり」,「学習者の活動の質を褒めたり」,「学習者のやり方で勉強する時間を与えたり」,「興味を通して動機付けさせたりすること」が学習者の「自律性」を支援すると述べている(p.186)。また外国語学習において,教師が適切に言葉を使用して学習者を納得させたり,励ましたりすることは学習者の自己効力感(Self-efficacy)を育てることに繋がるとある(Mills, 2014)。Bandura(1997)によって提唱された「自己効力感」について,Mills(2014)は「(前略)提示されたタスクや活動を達成する能力があると個人が確信することであり,その個人の未来の行動を予想するものとして使用されるかもしれない。」と言及している(p.8)。また「特に困難に直面した時,重要な人物が個人の能力を信じることを伝える行為は,疑いの目をむけられるより,その個人の有効性の感覚は教師と学習者が全体で,時には個別で学習者が抱えている言語学習への心配や不安を話し合い,信頼関係を築くことが良い結果を生む学習環境を形成するとし,前述した香港の大学における研究では,消極的参加の学習者に教師が個別に対応した結果,その学習者がクラスで教師の質問に対して進んで回答するようになったことが確認されている。今回この「自由発表」や他のクラス活動を通して,学習者が積極的に挙手をして自分の意見を述べたり,教師の質問に対して競って回答したりするといったような行動は見られなかった。これらはやはり前述したように,文化的影響や過去の学習経験などによるものなのかもしれない。またこの積極的参加を調査する場合は,先に述べた Sato(1982)の研究で行われたように,クラスの中での学習者の自発的発話の数を比較検討する必要があるのかもしれない。しかし教師が学習者のモチベーションをあげ不安を減らすなどすることで,冨倉教子/「自由発表」とモチベーション (a sense of efficacy)は維持されやすい。」とある(Bandura, 1997, p.101)。一方 Tsui(1996)17
元のページ ../index.html#21