答した人数が 2 番目に多かった内容は,「10.自由発表をして,クラスの人のことをもっと知ることができた。/友達になれた。」で,13 名(87%)(うち 1 名は「とても」を選択)が「はい」と回答している。これはクラスメートと「密接な関係を持ち,他者と友好的な連帯感を持ちたい」(田中・廣森, 2007, p.62)という関係性の欲求の表れを示すものであり,「自由発表」を通してその欲求が満たされたと学習者は感じていると想定される。そしてこの「関係性の欲求」と「話す」活動への意欲との密接な関わりを示すデータが確認されている。 学期末に実施されたコース全体に対するアンケート(「自由発表」のアンケートとは別)を見ると,「一番良かった/楽しかった/面白かったと思えることはなんですか。」という質問に対し,15 名中 8 名(15 コメント中 8 コメント)が「自由発表」を含む「話す」活動を挙げ,その中にクラスメートとの「関係性の欲求」がうかがえるものが少なからず含まれているのが確認できる(以下参照。)質問項目:「一番良かった/楽しかった/面白かったと思えることはなんですか。」(全体アンケートからの引用) □自由発表。(2) □自由発表はさいこうだった(すきなことをやったらたいへんではない)。 □ディスカッション。 □友達と一緒にディスカッションは一番良かったことと思える。 □ ディスカッションが多いので,みんなと話すチャンスは多い。発表も日本語を話すことが練習できる。 □発表時,ほかの学生の個性が見えることが面白かった。 □発表はとても面白かったと思います。 (合計 8 コメント) コースワークには「自由発表」以外の活動としてディスカッション,発表があるため,上にある「ディスカッション」「発表」は,「自由発表」以外の「話す」活動が含まれている可能性がある。いずれの場合でも,アンケートの結果から,学習者は「話す」ことに対して前向きな姿勢を示していることが分かる。またそれと同時に,「友達と一緒にディスカッションは一番良かった」「みんなと話すチャンスは多い」「ほかの学生の個性が見えることが面白かった」など,クラスメートとの友好的な関係を持つことと「話す」活動との関連性が見られる。また「自由発表はさいこうだった(すきなことをやったらたいへんではない)。」という回答は,先で述べた自律的欲求と学習との関係を表しているさらなる一例と捉えることができる。 一方以下のコメントは,学習者同士,または学習者と教師とのつながりの重要性を提示している。16早稲田日本語教育実践研究 第5号/2017/3―20
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