杉本 美穂・水田 佳歩・奥村 恵子【実践紹介】早稲田日本語教育実践研究 第 5 号 科目名:総合日本語 4 レベル:初級 1・2 /中級 3・ 4 ・5 /上級 6・7・8 履修者数:19 名 本実践対象である中級レベルにあっても,発音に難点のある学習者は少なくない。しかし,いわゆる 4 技能の総合的学習を目指す「総合日本語」科目において,教室活動の中で発音を個別に指導する余裕は乏しく,また,学習者が自律的継続的に発音矯正を試みるツール・方法にも工夫の余地が大きい。そこで,スマホ音声認識アプリを発音正誤判断ツールとして活用し,個々の学習者がこれを用いて自らの発音に対する自己課題を発見し,その改善を目指す実践を試みた。2-1.実践対象・事前調査結果 実践対象は「総合日本語 4」F クラスで,19 名の履修者が在籍した。なお,このうち調査協力を得られたのは 15 名で,以下の考察は,この 15 名を対象とする。 事前調査として日本語の発音に関する履修者の意識を調べたところ,「日本語で話す際,自分の話が相手によく通じるか」という問いに対しては,15 名中 14 名が「とても/まあまあ通じる」と回答した。つまり,日常会話において発音に起因する支障を意識する者は少ないと考えられるが,一方,「日本語で話す際,発音が気になるか/大事だと思うか」という問いには,すべての履修者が「とても/まあまあ思う」と回答し,発音練習に対する潜在的なニーズはうかがえた。しかし,実際に「発音の練習をしたことがあるか」という問いに「ある」と回答したのは 5 名で,日本語の発音練習の必要性は感じつつ実際にはその機会が少ない実態が浮かび上がった。なお,発音練習をした経験がある履修者のうち,3 名は「発音のクラスを受講」,1 名は「友達と」と回答,本実践で発音練習ツールとしたスマホ音声認識アプリや PC サイトを活用した例は,「OJAD」を挙げた 1 名のみだった。発音のクラスを受講したり友人とその機会を設けたりすることはもちろん大事だが,自律的継続的に学習者が単独でも手軽に発音矯正を試みるツールとして,スマホアプリや187―自己課題発見から自律練習への試み―1.実践目的2.実践対象・方法PC サイトが活用できるなら,それは日本語教育上有用な手法になると考えられる。スマホ音声認識アプリを用いた自律発音練習
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