早稲田日本語教育実践研究 第5号
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着物の歴史や着物を着ての作法をも習う。また,そのまま「百人一首カルタ」大会を実施することで,学生達をさらに古典の世界へと導く体験となっている。図 1 春の吟行 句を詠む 毎学期アンケートを書いてもらっているので,以下に抜粋する。 ・チャレンジングだったが読む自信がついた。作者を知ってもっと興味がわいた。 ・時間が足りなかったが,読み終わった達成感と満足感で,もっと読みたくなった。 ・着物を着て「百人一首カルタ」を取ったことは一生の思い出。 ・授業で『蜜柑』を読み始めたら,続きが知りたくて帰りの電車で全部読んだ! ・キャンパス内や大隈庭園を吟行しながら,自分も短い旅をしている気分になった。 学生の生き生きとした喜ぶ顔に元気づけられ,毎学期ボランティア,各同好会,さらに着付けの先生方との調整などに奔走している。ボランティアは,なかなかチャンスがないという同世代の学生達との交流のきっかけともなり,発音を直しながら楽しく読むことで,お互いに刺激となっているようだ。着付けはプロの先生方から直接ご指導を仰ぎ,浴衣や振袖に手を通しカルタ取りもできる貴重な機会であり,留学中だからこそ可能な日本の伝統文化の体験となっている。ただし,一教師がすべて手配することは大変な時間とエネルギーが必要なので,他の授業と協働していくことも考えていきたい。 「読む」糸口になるように,参考図書,CD やビデオ視聴と共に,実際に様々な「本物」を学生に体験させることで,文学への関心が呼び起こされているようだ。 読む=知ることと考え,古語や文法にとらわれず,人間の五感を通して想像力を豊かに膨らませて読み進み,さらなる名作を知るきっかけにしてほしいと願っている。(つじむら まちこ,早稲田大学日本語教育研究センター)早稲田日本語教育実践研究 第5号/2017/183―184 184図 2 振袖を着てのカルタ取り4.学生の反応5.成果と課題

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