津花 知子【実践紹介】早稲田日本語教育実践研究 第 5 号 科目名:読解・ディスカッション:新聞記事や雑誌記事 レベル:初級 1・2 /中級 3・4・5 /上級 6・ 7 ・8 履修者数:10 ~ 25 名 本科目の目的は 3 つある。第一に,社会的なトピックについて深い意見が言えるようになることである。上級レベルでは,身近で具体的なトピックだけでなく,時事問題など社会的なトピックについても意見を述べることが求められるが,意見を述べるためには,日本語のレベル以前に,そのトピックについての知識がなければならない。そこで,まず新聞や時事問題を扱った雑誌(以下「雑誌」)の記事を読み,問題の背景や内容について十分理解した上で,ディスカッションを行う。価値観の違う他者と話し合う中で,多様な視点を獲得したり,自らの思考を深めたりすることができ,より説得力のある意見が言えるようになる。第二に,社会的なトピックについて語るために,抽象度,難易度の高い語彙や表現を習得することである。流暢に話せる学習者でも,日常会話であまり使用しないような語彙や表現を自然に習得するのは難しい。それらを習得する上でも,新聞や雑誌の記事は良い素材である。そして第三に,学生が自律的に新聞や雑誌が読めるようになることである。新聞や雑誌に興味があっても一人で読むのはハードルが高いと考えている学生が少なくない。本科目の受講を通じ,読解に自信をつけ,自ら記事を選択して読めるようになることを目指している。2-1.授業の概要 15 回ある授業の前半 3 分の 2 は担当者が選んだ記事を読む。流れとしては,次の①〜⑤の通りである。①テーマに関する簡単な背景説明と話し合いを行う。②宿題として記事の大意把握とわからない語彙を調べる。③記事をクラスで精読し内容を確認する。④ 3 〜5 人の小グループに分かれてディスカッションを行った後,全体で共有する。⑤宿題として自分の意見をレポートにまとめる。 以上を 2 コマ強かけて行っている。ディスカッションのテーマは,学生自身に考えさせたこともあったが,現在は担当者が記事に関連して 3 〜 4 つ指定している。ディスカッションには日本人学生も数名,ボランティアとして参加している。これ以外に,宿題として,担当者が作成した語彙のワークシート,記事に関連した日本人へのインタビュー活動(2 回程度)も課している。 後半は期末課題として,学生自身が関心のある記事を選び,記事の要約と自身の意見をレポートにまとめた上で,クラスで発表している。発表では質疑応答の他,評価シートを配布し,簡単な相互評価と自己評価を行う。最後は発表テーマの中から関心のあるテーマ1791.授業の目的2.授業について社会について語れるようになるために
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