早稲田日本語教育実践研究 第5号
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草野 宗子 【実践紹介】早稲田日本語教育実践研究 第 5 号   科目名:日本の新聞を読もう  レベル:初級 1・2 /中級 3・4・5 /上級 6・7 ・8  履修者数:35 名 日本語の学習者が基礎的な文法を習得し,語彙・表現などの知識が増えて中級以上の段階にさしかかると,日本語母語話者のように新聞や小説を読んでみたいという希望を持つようになる。それまで教科書の文章のほか,さまざまな種類の文章を読んでいると思われるが,学生たちにとって「新聞を読む」ことは一つの明確な目標になっている。 新聞を読む上で難しい点は,独特の形式,語彙,記事内容の背景知識などがあげられる。確かに「派閥の領袖」という言葉は政治面の記事以外では目にすることがないし,オバマ氏の広島訪問というニュースは,第二次大戦からの経緯を知らなければ日本社会にとって重要なニュースだとは思えないだろう。クラスは 6­7 レベルの設定で,上述したような新聞読解の難しい点,あるいは新聞記事の特徴をふまえ,読むための基本的な技術を身につけて生の新聞を読み解くという活動を中心にしている。 学習活動は以下のとおりである。①新聞独特の形式を知る。②記事の特徴を含む代表的な例を読んで練習し,次に最近の記事を読む。③学生が関心を持った記事を紹介する。 コースの始めには①を中心に練習する。具体的には内田他『構成・特徴・分野から学ぶ新聞の読解』を参考に,新聞の構成や特徴を知り,読む練習を段階的に進める。例えば新聞は見出し,リード(前文),本文など定型の構成になっているが,それぞれの関連付けを見て,内容を把握する。また,第 1 面,国際面など新聞 1 紙全体の編集を見て,知りたいニュースを探したり,情報をまとめたりする活動をペアまたはグループで行う。 形式の練習に慣れてきたら,②の記事の特徴を重視した練習に進む。その一つに,あるテーマについて異なる観点から取り上げられた記事が同時に複数の面にわたって載ることがある。例えば宇宙開発というテーマでは,第 1 面にロケット打ち上げの時間,場所,宇宙飛行士の名前など一般的な情報があり,科学面には宇宙での実験の内容などが書かれている。社会面には宇宙飛行士の出身地や家族の談話などが出ており,これらを読んで紙面の違いを学ぶ。もし話題の人物について知りたければ,社会面を開くというように自分で読むときの選択ができるようになる。  ②ではこのほか「第一報と続報」の練習を行う。大きな事件・事故のニュースがあると,即座に発行される記事(号外など)に始まり,時間の経過に従って明らかになった1771.はじめに2.授業の概要読みに習熟し,社会を知る

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