熊田 道子【実践紹介】早稲田日本語教育実践研究 第 5 号 科目名:近現代小説を読んでみよう レベル:初級 1・2 /中級 3・4・ 5 /上級 6 ・7・8 履修者数:35 名 当該クラスは,日本の近現代小説を読むクラスである。日本の近現代小説に興味があり,日本語で読みたい気持ちはあっても,一人で読むことに困難を感じたり,何を読んだらいいかわからない学習者は多い。そこで,当該クラスでは,様々な近現代小説を読み,近代以降の小説への知見を広めることに加え,学習者が自力で小説を読めるようになる道筋をつけることを目標としている。 小説は個々の作家・作品の個性的な魅力が強く,独自性が注目されがちである。しかし,当該クラスの目標に鑑みれば,学習者が一人で作品を読む際の道標となるような,汎用性を考慮した作品選択が重要であろう。 クラスで読む作品は,学習者からの読みたい作家・作品のアンケートに基づいて決定する。以前は人気の高い作品から読んでいたが,その結果,期によっては,作家や作品に偏りが出ること,また,全員の希望するものを読むことができないという問題があった。 そこで,学習者の興味・関心,作品の独自性を中心に据えつつ,「1.クラスの目標」に合わせてクラスで読む作品を選ぶことにした。学習者から人気の高い作家・作品を得票順に候補作とした。クラスで読む作品を決定する基準を定めるため,当該クラスを受講した学習者のアンケートの「読みたいもの」「困難を感じること」についての記入,また,以前の履修者の困難点を分類した。そして,以下の 3 点を選択基準に設定した。ため,背景知識のない学習者にとって読みにくいと感じられている。そこで,クラスで読むものの半分は,明治〜戦後初期の候補作の中から 10 年スパンで作品を選ぶこととした。ンルの作品を選択し,読む際にはジャンルの特徴に焦点を当てた。【例:恋愛小説・社会小説(社会問題・社会的事象を描いたもの)・私小説・自伝・推理小説・童話】見落としがちなものを採り上げた。【例:語りの人称・会話体(語り方,人物像等)・心理描写・比喩・オノマトペ・慣用表現 / 慣用句・抽象的な表現】1751.クラスの目標2.クラスの教材選択基準① 通事的変遷:明治〜戦後初期までは,現代と比べ,言語面・文化面等の異なりが大きい② ジャンル:ジャンルごとの構造を知ることは,作品理解上重要であるため,多様なジャ③ 注意すべき言語的特徴:小説に見られる言語的特徴の中で,学習者の誤りやすいもの,「個」と「汎用性」を考えた教材選択
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