森元 桂子【実践紹介】早稲田日本語教育実践研究 第 5 号 科目名:「新聞」を読んで学ぶ日本語 レベル:初級 1・2 /中級 3・4・5 /上級 6・7・8 履修者数:35 名 本科目は,2015 年度に新設科目として採用されたものである。開講の動機となったのは,筆者自身が学生時代に米国への短期留学に行った際の苦い思いであった。「せっかくアメリカに来たのだから,現地のニュースぐらい新聞で読んでみたい。」と思ったものの,当時の語学力では全く歯が立たず,独学で読める力をつける他に術もなく,ただただ愕然としたことを今でも鮮明に覚えている。教科書の文章は往々にして記事の内容や情報が少し前のものになりやすく,読む理由も学生にとっては,教科書に載っているからに過ぎない場合も多いと考えられる。彼らが日本まで来て,今,心から読みたいものは何か,読めるようになりたいものは何か,日本語で書かれたものを通して知る意味のあることは何かと考えた時,「もし中級学習者でも一般紙を読める足がかりとなる授業があったら……。」とあの頃に感じた記憶が蘇り,自力である程度日本語の新聞を読めてしまう上級者よりも,むしろ中級学習者にこそ「新聞」を扱い,読解の手助けをする授業が必要だと考え,中級に合った教材の選択や授業の在り方を模索した上で,この授業活動を考案した。 新聞の文章や表現の特徴を理解し,新聞の読み方に慣れ,日本語のことばや表現を増やし,自分で一般紙の読解に取り組める力をつける。また,記事に書かれた内容を理解し,背景にある社会問題をテーマとしたディスカッションを通し,自身の関心や考えを深める。さらに,社説の比較により多角的な視点について学び,コラム執筆や発表を通して,興味のある問題に対する自分の考えをわかりやすく他者に発信できるようにする。3-1.教材 一般向けの新聞と同じく昨日今日起こった出来事を記事としながら,漢字はルビ付きで表現が平易な小学生向けの新聞(朝日・読売・毎日)を主教材としている。記事自体だけでなく,新聞に掲載されている用語の解説も併せて使用する。また,記事の理解を深めるために,字幕入りの E テレ「手話ニュース」の動画や「NHK News web easy」の記事を補足として使い,内容を把握できた上で,中高生向けの新聞(朝日・読売)や一般紙(朝1711.はじめに2.授業の目的3.授業の概要中級学習者にこそ「新聞」を
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