早稲田日本語教育実践研究 第5号
171/272

□□□□□□□□□□□□⑤〔書き取り〕 音声を聞き,漢字を選択したり,書き取ったりする問題である。漢字の字形と字義の結び付きを問う問題は多いが,そこに音声が結び付いた漢字練習の形態は多いとは言えない。音声を聞いて漢字を書き取る技術は,例えば大学生であれば講義では必須の技術といえる。また漢字と音が結び付いていないことが原因で,パソコンなどで文章を書く際に漢字変換ができないような問題に直面することもある。本練習では付属の音声を利用して,音声に照らして正しい漢字を選択したり,書き取ったりする,といった他の漢字教材ではあまり見られないユニークな練習を行う。音声は単文(図 10)や,ある程度長さのある独話や会話(図 11)など様々な形式を用意した。特に独話や会話では登場人物に設定があり,文脈の中で漢字を書き取る練習が行えるのが特徴である。音声は,mp3 形式のものを専用のホームページから無料でダウンロードすることができる。学習者は身近なスマートフォンなどでも再生が可能であり,教師は一括ダウンロードしたものを CD 化して教室で用いることができる。⑥〔読解〕 まとまった文章を読み,質問に答える問題である。漢字学習の目的は漢字を知識として覚えることではなく,覚えた漢字を通して,内容を理解したり,伝達したりする運用力をつけることである。本練習では学習した漢字を含む文章を読んで,その漢字の読みや書きを示すだけではなく,文章の内容が漢字を通して理解できるかを問うているのが特徴である。文章を理解するためには語彙や統語的な力も求められるが,初級の学習者が理解できる語句や文型を選択し,難しい表現には訳を付けるなど,漢字以外の負担を軽くするような工夫をした。図 12 は,主人公トムの日記の一部である。この日記の後に,「引っ越した167岩崎陽子・古賀裕基/『ストーリーで覚える漢字300ワークブック』紹介□□□ □□□□□□□□□□□□□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□図 10 音声を聞いて漢字を選択する問題例(『ストーリーで覚える漢字 300 ワークブック』p.83)図 11 音声を聞いて漢字を書く問題例(『ストーリーで覚える漢字 300 ワークブック』p.83)

元のページ  ../index.html#171

このブックを見る