早稲田日本語教育実践研究 第5号
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162早稲田日本語教育実践研究 第5号/2017/161―170 図 1 「メイン教材」におけるイラストとストーリーによる漢字の提示(『ストーリーで覚える漢字 300〔英語・インドネシア語・タイ語・ベトナム語版〕』p.14) 「メイン教材」には練習問題が用意されているが,単漢字の意味の確認問題や二字,三字の漢字語の意味を類推する問題が多い。たとえば「火」「山」を習う回では,「火山」の意味を類推し,4 つの選択肢の中から「volcano」の意味を選ぶ問題がある。「メイン教材」では,あくまでも,単漢字の字形と中心義に慣れ親しむこと,そして単漢字から語や文の意味を類推することに重きを置いている。そのため,練習問題は短文の中での練習にとどまり,まとまりのある文章・会話は扱っていない。また,意味の類推ができれば,決して音声化しなくても(読めなくても)よいとしている問題もある。しかし,漢字の意味理解や記憶を促すだけでは,漢字(語)の実際の使用には結びつくとは言えないだろう。漢字(語)の実際の使用を見据えたとき,さらなる段階として,さまざまな学習のアプローチも提案しなければならないと考えた。 そこで岩崎・古賀による「ワークブック」では,多様な練習問題を提出した。漢字を概念別に整理する問題や,音声を聞いて正しい表記を選ぶ問題,漢字語を用いて自分のことを表現する問題などである。練習問題の後半では,意識的にまとまりのある文章を多く提出した。「ワークブック」全体を通してキャラクターを登場させ,それぞれの生活や人物間のやり取りがイメージできるような文脈情報も多く提示した。具体的な特徴と対象については次節以降で述べる。2-2.「ワークブック」の特徴 「ワークブック」の特徴として,主に以下の 5 点が挙げられる。①漢字(語)の概念を活用 「メイン教材」に引き続き,漢字(語)の概念を活用した問題である。無数にある漢字(語)を,曜日,体の部位,自然に関する語,などの概念のグループで整理することで,まとまりのある形で漢字を学習することができる。②キャラクターの文脈のなかで学ぶ 全体を通して,約 10 人のキャラクターが登場する。日本の大学に留学しているトムか

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