指導にあたった教師 10 名に対し,学期終了後に,問題を使用した感想や授業の様子,問題の長所や改善すべき点などを尋ねた。全般的な評価は,10 名全員について好意的であった。問題を使用する利点として,大別すると次の 3 点の指摘があった。1)語彙リストを覚えるだけの学習方法からの転換が図れる。 従来は訳語を覚えるだけの状態で,そこからの転換を促すことが,この問題を使用する利点とする声が複数あった。教師 A は,この問題の長所を問われ,「気づき。語彙を勉強する時には,ただ語彙だけの訳を覚えるだけじゃだめなんだってことに,学生が気づいてくれること」と述べた。また中国人の教師 B は「中国では,ことばは辞書を調べて覚える,それしかない」とした上で,この問題をすると,語句を「自分のものとして使うという点で考えると,すごくよかった」と述べた。その他,語の共起関係の重要性への気づきを,この問題の最大の利点とする声もあった。2)問題形式なので面白く,学生が楽しく取り組める。 インタビューで授業の様子を尋ねたところ,いずれの教師も楽しそうだったと報告した。教師 C は「育つ」の指導時の様子を,「「これ使いますか」って聞くと,いろいろ間違いを……,『わかんないです』『なんですか』,みたいな,『「ひげ」んんん?』みたいな,考え込んで,はい。そういうやり方のときに,すごく楽しそうでした」と話した。3)指導すべき点が明確になり指導しやすくなった。 この問題により指導がしやすくなったという声も多数聞かれた。教師 C は,今までは何を指導するかも勘に頼り恣意的に選んでいたが,問題があれば,それに沿って指導すればよいので指導しやすかったと述べていた。 インタビューでは,この問題を使って指導したことで,教師自身にも語彙指導についての気づきがあったことが報告された。例えば,教師 D は,次のように,これまでは語彙指導を重視していなかったが,問題をして意識が変わったと述べた。意味を調べてきて,意味がわかれば,この問題が解けると思っていました。それが結構予習はしてきているのに,結構間違えていて,どうしてかっていう質問を受けたときに,あ,こういうところを授業で取り上げなくちゃいけなかったんだっていうのが,初めてわかりました。…… (中略) ……(語彙は覚えるしかないので)あまり授業で教師が時間をとってやるものではないっていう,おごりというか,意識があったので,私自身が語彙の指導を重要視していなかったし,どう指導すればいいかもわかってませんでした。…… (中略) ……覚えるものっていう意識がなくなった。 同様の報告が,教師 D のほかにも複数あった。また,学生にとってどこが難しいのかがわかったという声が多数あったほか,語の共起関係を教える必要性に気づいたという声もあった。さらに,学生が納得できる説明をするには,十分な準備が必要なことに気づいたという声も複数聞かれた。語彙指導の前にコーパスを調べたことはなかったが,初めて使って準備したという報告もあった。このように「ことばの使い方の問題」は,学生のみでな158早稲田日本語教育実践研究 第5号/2017/151―1606.教師へのインタビューにおける評価
元のページ ../index.html#162