早稲田日本語教育実践研究 第5号
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早稲田日本語教育実践研究 第5号/2017/151―160 く,状況がわかるよう語を補った。 出題語となる動詞を決めると,その動詞がどのような語と結びつき,どのような連語を作るのか,そのカテゴリーを考え,それが明確になるよう選択肢を考えた。選択肢は,ninjal3)等によるコーパス情報を参考にし,学生にとって既知と思われる語句を選んだ。使えない例となる選択肢は,考えたカテゴリーが浮かび上がるようなものを考え,その語句と動詞が結びついてできる連語が web 上で使用されていないことを確認した。3)問題 3 助詞の空所補充問題 学生にとって難しいと思われるものという観点から,「を」以外の助詞,または「送る」のように補語が二項以上になるものを中心に出題した。ただし,移動動詞の「を」は難しいと思われるため,取り上げるようにした。 問題作成にあたっては,より確実な理解を図るため,次のような点に注意した。ている場合は,基本的な意味を確認する。必要性や難易度により,発展的な問題を入れる。②出題語以外はできる限り平易な語を用い,学習者のレベルにあった難易度にする。③学習者の言語生活領域を想定し,学習者にとって有効な文脈を考え,問題を作る。④自己の語感だけに頼らず,必ず web 上での使用・不使用を確認する。4-1.クラスでの使用時の様子 筆者が担当した授業と各クラスの授業記録および教師へのインタビュー(6 で述べる)で知り得た範囲では,どのクラスでも学生はこの問題に熱心に取り組んでいたようである。正誤が明らかなクイズ形式になっているため,クラスでは学生が「できた」「間違えた」と一喜一憂しながら,楽しそうに取り組む様子が見られた。 筆者自身が第 1 課で初めてこの問題を指導した際は,学生は訳語と日本語の語との意味のずれに気付いておらず,想定どおり多くの間違いをし,学生自身驚いていた。しかし,第 2 課,第 3 課と問題を行うにつれ,間違いが少なくなった印象があった。訳語から考えると答えを誤ることがあると気づいたらしく,「これは,英語の訳だと使えるけれども,たぶん使えない」といった予想を語る学生もいた。問題 3 の助詞の問題も,印象ではあるが,次第に学生から正しい答えが出ることが増えたように感じられた。4-2.クラスにおけるやりとり クラスでは,問題をめぐり,学生と教師,あるいは学生同士で,様々なやりとりが行われ,授業記録にも,その報告が多くなされていた。次の二つの例は,授業を担当した教師が授業記録を元に後日そのやりとりを思い出し,筆者に報告したものである。① 教科書に出てくる意味・用法を確認する問題にする。教科書で,派生的な意味で使われ4.クラスにおける使用154

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