木下直子・田川恭識・角南北斗・山中都/自律学習を促進させるためのシステムづくり 知らない人もいると思うので)。外国人が間違えやすいもの(「そうですか」やイントネーション(「本棚」とかもまちがえやすいです),とくにアクセント)の問題のバリエーションが多いといいなと思いました。また,会話例や単語例をダウンロードし,日常でもきけるようになるとうれしいです(全問完答できたらダウンロードできるようになるとか)。検索できるようになると,ふだんの疑問も解決できると思います。単語 1 つのときと何かと重なると(複合する)とアクセントが異なるものについても勉強できるとうれしいです」「気になる単語とかを受けつけ,その単語に音をくわえてみるといいと思います」という回答が得られた。 以上の結果から,明らかになった課題を 4 つの点にまとめる。 1 .「かんたんなチェック」に天井効果が見られ,学習目標の設定や学習段階が描きにくいということがわかった。初中級を対象としたコンテンツを考えていたが,継続的に利用するためには,上級者向けの「かんたんなチェック」項目を加えていく必要がある。また,声の男女の組み合わせを複数設けたがために,イラストの情報が必ずしも合わない状況が生じ,話者の特定を妨げた。 2 .「れんしゅう」の出題をランダムに提示してほしい,スクロールやクリックの数が多すぎる,音声をダウンロードしたいなどの意見があったが,容量制限や費用との関係,デザイン上の制約などから優先順位の再検討が求められる。 3 .日本語の発音に関する知識への理解を促すことができることがわかった。これは,音声を確認し,記号を見ながら発音のポイントが理解できるというマルチメディアならではの利点が生かされたと考える。 4 .上級学習者 1 名のコメントに,どのようなサイトかがよくわからないとあったが,各ページに説明をするだけでなく,トップページに全体の活用法をイメージできるようにするための工夫が必要だということが明らかになった。 本稿は,Web 教材「つたえる はつおん」の学習プランの設定に関わる「かんたんなチェック」「れんしゅう」「かいせつ」に焦点をあて,開発過程で挙がってきた教育者側の意図,Web サイトの制作者側の工夫,学習者の使用感,要望という 3 者の視点から問題点と今後の課題を報告した。 いくら理念やコンテンツがよかったとしても,学習者が実際に利用しなければ意味がない。今後は,学習方法を紹介している動画コンテンツに焦点をあて,学習者にとってわかりやすく,使いやすい,身近な教材となっているか,検討していきたい。参考文献青木直子,中田賀之(2011)『学習者オートノミー 日本語教育と外国語教育の未来のために』ひつじ書房.木下直子(2011)『日本語のリズム習得と教育』早稲田大学出版部.木下直子,田川恭識,角南北斗(2015)「オンライン音声学習支援コンテンツの開発-試作版『診1495.まとめと今後の課題
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