な小型化された情報端末での利用を強く意識している。日本語教師は実務では PC を使うことが多いだろうが,学習者が日常的に利用しているのはスマートフォンであろう。教師が授業で提示するだけの教材ならともかく,学習者が授業時間外,教室以外でも自主的に使うことを想定した教材の場合は,スマートフォンでも問題なく使えることが重要になってくる。 ここでいう「問題なく使える」とは,単に「正常に機能が動作する」というレベルの話ではなく,スマートフォンで「ストレスなく快適に使うことができる」というレベルの話である。スマートフォンの画面幅は PC に比べてかなり狭い。PC 向けの従来の Web サイトをスマートフォンで表示させると,サイト全体を画面内に収めようとするため,文字も読めないほど極端に縮小表示されることが多い。二本の指をつまむように動かせば画面の一部を拡大することができるが,頻繁にそのような操作をさせられるのは大変煩わしい。またスマートフォンでは指でボタンを押すため,マウスでは難なくできていた操作にも困難さを感じるだろう。これらの問題をクリアした教材を作るためには,設計段階からスマートフォンの制約を意識することが重要になる。 そこで,本教材ではスマートフォンでの利用を想定して画面レイアウトを工夫している。スマートフォンやタブレットのような画面の幅が狭い端末では,横並びの項目が縦に並ぶなど,自動的に適切なレイアウトで表示されるようにした(図 1,図 2)。 こうした対応で特に頭を悩ませたのは,会話のコンテンツの設計である。イラストと日本語が同時に見られるレイアウトが教材としては望ましく,当初は吹き出しを使うことを考えていた。ところが,吹き出しを使ったレイアウトは横幅を大きく必要とするため,幅の狭いスマートフォンのような画面では実現が難しい。そこで,PC では日本語部分はイラストの右側に,スマートフォンではイラストの下部に表示されるような設計にしている(図 1,図 2)。加えて,誰の発言かがわかりにくくならないよう,話者以外のイラストを半透明にし,話者に視線が行くようにしている。こうした演出は,スマートフォン向けのゲームアプリの画面設計を参考にした(図 3)。144早稲田日本語教育実践研究 第5号/2017/141―150図 1 スマートフォンでの表示図 2 PC での表示
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