木下直子・田川恭識・角南北斗・山中都/自律学習を促進させるためのシステムづくり 1433-1.開発の流れ 本プロジェクトの目的は,日本語音声における自律的学習支援システムを開発することである。プロジェクトの開始当初は,第一著者と第二著者の 2 名でコンテンツの設計を進めていたが,それを形にするための技術面の理解も必要なことが見えてきた。例えば,コンテンツを Web 上に公開する場合,サーバーの調達などの環境作りや,コンテンツのアイデアをプログラム上でどのように実装していくか,といったことである。そこで,Webコンテンツ制作の専門家として協力を依頼したのが第三著者である。 3 名で議論を深めていくなかで,技術面の課題解決の前に,まずコンテンツの設計にも検証が必要だろうということになった。そこで行ったのが,簡易的なユーザーテストの実施である。一般に教材作成者は,学習者にとって最も効果的と思われる学習内容や手段を考え,教材設計をしていく。しかしながら,学習者のニーズを教材作成者が適切に把握しているとは限らないため,学習者にとって使いにくい教材を作ってしまうことは多い。そこで,本格的な開発に入る前に,パワーポイントを使った簡易的なコンテンツを作り,必要なコンテンツの確認を行うことにした。 このユーザーテストの実施後,得られた知見をもとにコンテンツの内容,問題数,デザインを見直した。その後,Web サイトの形でコンテンツを作成し,再度ユーザーテストを行い,問題点の修正を図った(木下ほか 2015)。その結果,完成した Web 教材が「つたえるはつおん」(http://japanese-pronunciation.com)である。3-2.コンテンツ概要選択するクイズ」のコンテンツである。状況は 4 コマ漫画形式で説明される。2 種類の音声から文脈により適していると思われるものを選択すると,即座に正解が表示される。 このコンテンツは,5 つの音声項目(イントネーション,アクセント,リズム,単音,有声・無声音)から構成され,それぞれの音声項目に 4 種類ずつ,合計 20 種類の場面が用意されている。また,音声には 6 名の話者(男女 3 名ずつ)を起用し,場面ごとに 6 種類の組み合わせを聴き比べられるようになっている。また,各音声項目の簡単な概念の説明も英訳付で掲載した。 学習者は自分の学びたい音声項目・場面を選んで音声を聴くことができるが,最初はどれから聴けばいいかわからない場合もあるだろう。そこで,各音声項目から 2 つずつ選んだ 10 場面を「かんたんなチェック」という形にまとめ,短時間で自分の苦手な場面の見当をつけやすくしている。まずはこのチェックを通して,この教材の特徴を理解してもらい,目標を立てて学習してもらえれば,というのが制作側の狙いである。3-3.Web サイトの設計 近年のタブレットやスマートフォンの普及により,もはや Web サイトは PC のみで閲覧するものではなくなった。そのため本教材の設計にあたっては,スマートフォンのよう3.Web 教材「つたえるはつおん」の開発 Web 教材「つたえるはつおん」(以下,本教材)の柱となるのは「状況に適した音声を
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