早稲田日本語教育実践研究 第5号
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木下 直子・田川 恭識・角南 北斗・山中 都早稲田日本語教育実践研究 第 5 号 本稿は,発音の自律学習を支援するための Web 教材「つたえるはつおん」(http://japanese-pronunciation.com)のシステム構築のプロセス,開発過程で挙がってきた問題点,今後の課題の情報提供を目的とする。自律学習とは,学習目標を自ら定め,自分に合った学習方法で学習を遂行し,目標の達成度を自ら判断・評価し,次のステップにつなげるという学習サイクルを回すこと,回し続けることであると捉える。発音の目標設定をする段階で支援を必要とする学習者が少なくないことから,本教材では,「かんたんなチェック」というテストを提供している。本稿では,このテストをはじめ,サイトの使用感,およびに自律学習を促進させるための課題ついて,日本語学習者を対象に行ったアンケート及びインタビュー調査の結果から検討する。キーワード:発音,自律学習,Web 教材,学習方法,インタビュー本稿は,Web 教材「つたえる はつおん」(http://japanese-pronunciation.com)の開発にあたり,自律学習を促進させるためシステム構築のプロセス,開発過程で挙がってきた問題点,今後の課題の情報提供を目的とする。 まず,Web 教材を開発した背景には,「発音がぺらぺらになりたい」「日本人のように発音したい」という発音に対する学習意欲が高い学習者であっても,具体的な短期目標をたずねてみると,何をどう勉強したらいいかわからないという学習者が少なくないということがある。日本語教師の音声教育に対する苦手意識も報告されており(谷口 1991), ほかにも,Web 教材の利点には,時間的な制約を受けないことがある。そのため,様々な学習方法を提供し,選択してもらえる余裕がある。例えば,音声の感覚のつかみやすさや好みは学習者によって異なるが(中川ほか 2008,中村ほか 2016),「音」「夫」のような促音の有無によるリズムの違いを練習する場合,学習スタイルの影響が報告されている(木下 2011)。実際の授業においても,手をたたくといった身体を動かしながら練習する方法,記号を書いたり,音声分析ソフト Praat で自分の発音を可視化するなど,視覚的な補助を使って練習する方法,シャドーイングなど,音声だけを聞いて練習する方法の中でも,音の違いが捉えやすいと感じるものは異なっている(Kinoshita 2015)。Web 教材であれば,学習者は様々な学習方法を,動画を通して学び,自分に合ったものを選択することができる。 一般的に,発音習得には時間を要するという通説があり,我々の直感と一致するが,発【ショート・ノート】141―Web 教材「つたえる はつおん」の開発―要旨1.背景・目的Web 教材であれば,学習者に学習の機会を広く提供できると考えた。自律学習を促進させるためのシステムづくり

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