ふり返りでは,「バタフライ効果を覚えだした。ブラジルで蝶が羽ばたいたことが原因で中国では嵐になることで,社会的な規模になっても同じと思う。世界の投資-日本のバブル-国営企業の運営-伊東さん(第5回授業で扱った群像の一人)という流れで,最後に影響したのは伊東さんだ。(学部 4 年生・台湾)」など,グローバル化社会での出来事が個人にまで影響を及ぼすことを実感したものが目立った。また,「世界の情勢を他人事と思わず,自分に及ぶリスクを察知する能力が必要です。伊東さんの場合,JALという名前に惹かれて働き始めたかもしれませんが,大企業も中小企業と同じく破綻のリスクを抱えています。(学部 1 年生・日本)」など,現状を分析し,リス① 自分たちに関連付けやすい「雇用」の問題・テーマを決める。例)なぜ留学生は,離職するのか。② ①で挙げたテーマを中心に書く。③ キーワードを用い,原因・影響などを考える。④ キーワード間の「つながり」を考え,線で結ぶ。⑤ ④に授業で触れた群像の生活状況を入れ込む。図 4 つながりの図クにどう向き合うかを思案する記述も多くあった。 第 9 回は,出身国・地域の雇用問題に関する記事を各受講生がグループで報告し,各国・地域の共通点・相違点を分析した。そして,第 4 〜 9 回に考えたグローバル化社会と「雇用」の総括として,第 10 回では「4 つの問い」に対する答えをグループで共有した。3-4-3.第 11 ~ 14 回:グローバル化社会における「食」を中心に 第 11 〜 13 回では,グローバル化社会における「食」を扱った。第 11 & 12 回は,ドキュメンタリー映画『Food Inc.』に登場する契約養鶏農家のキャロルさんを群像とし,食をめぐる消費者・生産者・小売業者の立場から「食」の問題を考えてもらった。この群像についても第 4 回同様ロールレタリングの活動を行ったが,自分たちが消費している「食」を支える生産者に関する知識がない場合,消費者として手紙の中で質問をしても,生産者の立場に立って返信を書くことが難しいだろうと推測した。そこで,第 11 回授業で生産者であるキャロルさん宛に往信の手紙を書いた後,手紙に書いた質問への答えを調べた上で,生産者の立場から復信の手紙を書く事前課題を設定した。第 12 回授業で復信の手紙をペアで共有した後,映画出演後大企業との契約を打ち切られたキャロルさんが,平飼いの有機農法で養鶏農場を経営している現況を映像で見た。 ふり返りでは,「大手企業は消費者たちの健康を無視して,売上を求めるため,安い原料を使って食品を販売しています。しかし,彼らはいずれ自分が作った食品を食べなければならないので,自分と自分の家族の健康を一切無視しました。(中略)農家たちの状況は50万ドル以上の借入金と平均18,000ドルの年収です。いろいろなデータを見た私は農家の未来を心配しています。(学部 2 年生・中国)」など,多国籍企業の利益至上主義と人々への影響,生産者の現状に対する憂慮が多く見られた。また,次のように,第 3 回で138早稲田日本語教育実践研究 第5号/2017/131―140
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