早稲田日本語教育実践研究 第5号
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「グローバル化社会と自己」(第 2 〜 3 回)↓「グローバル化社会における雇用」(第 4 〜 9 回)↓「グローバル化社会と自己」(第 10 回)↓「グローバル化社会における食」(第 11 〜 13 回)↓「グローバル化社会での新たな生き方を考える」(第 14 回)↓「グローバル化社会と自己」(第 15 回)湾)」など,自分の意志が社会の動きに影響を受けているというふり返りもあった。 第 3 回では,自分の幸福に対する価値観を知る「幸福論」「溜めチャート」を作成・共有した。「幸福論」は‘何をしている時,誰と一緒にいる時幸福を感じるか’など自分なりの幸福論を事前課題に課した。それを授業で共有した後は自分の幸福を支え136早稲田日本語教育実践研究 第5号/2017/131―140図 2 「事例から学ぶグローバル化社会と私 7–8」授業展開の流れ  「雇用」および「食」のテーマを扱うのは,いずれもグローバル化社会での人・モノ・コトの動きやそこでの問題を如実に反映しているためである。例えば,「食」においては,私たちは消費者として日々多様な国・地域に触れており,その背後には,生産者・小売業者の存在がある。つまり,「食」の流通はすなわちグローバル化社会の動きだと捉えられる。以上のことから,「雇用」と「食」のテーマを扱うことで,グローバル化社会の現状を知り,そこでのよりよい生き方を追求することが可能と考えた。 以下,2016 年度の受講生 21 名によるふり返りと成果物を一部示しながら,授業内容の詳細を見ていく。なお,ふり返りの記述は受講生が書いた原文のまま斜体で示す。3-4-1.第 2 ~ 3 回:グローバル化社会と自己 まず,グローバル化社会の諸問題について検討していく起点を確認するため,グローバル化社会で生きてきた自己をふり返る時間を設けた。 第 2 回では,これまでの人生をふり返る「人生マップ」の作成・共有を行った。「人生マップ」とは幸福の度合いを縦軸に,年齢を横軸に設定し,人生を曲線グラフで描いたものである(図 3)。ふり返りでは,「以前は小学校時代に中国に行ったことが,当時の自分にとってはあまり良くない思いであり,比較的不幸せだと感じていました。しかし,今ではそれが自分という人間を作った大きなターニングポイントで,非常に素晴らしく,必要不可欠な過程だったと考えています。(学部 2 年生・日本)」など,過去の否定的な考えを捉え返し,肯定的に意味づける記述が多く見られた。また,「留学は個人的な選択に見えるが,(中略)リーマンショックの影響で,台湾の失業率が高まっていた。その時に留学した方が将来仕事を探しやすいかもと思って,留学することに決めた。(学部 4 年生・台図 3 人生マップ

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