早稲田日本語教育実践研究 第5号
137/272

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□トンプソン美恵子/長期的なキャリア形成を視野に入れた日本語教育  者・社会の関係を考えるらせん的なプロセスの中で,グローバル化社会でどのように働きたいか,家族とどのように過ごしたいか,自分の生活を豊かにするとはどういうことかなど,職業に加え人生を包括した自己のキャリア形成に対し,展望を見出していく。 このプロセスでは,多くの受講生にとって最大の関心事である就職や起業に向けた思考と姿勢を醸成することも狙いとしている。例えば,この一連のプロセスは,就職活動の一環として行われる自己分析の側面を持つ。また,就職試験や社会人生活に備えた世界情勢の把握,そのための情報収集力や批判的思考力の鍛錬としても位置付けられる。この授業の目標を達成し,長期的な視点から未来の展望を見出す力を身につけることは,就職などの直近のキャリア形成につなげることも可能だと考えている。3-3.方法 以下,この授業において特に工夫した方法,1)学習サイクル,2)段階的な問い,3)4つの問い(岡崎,2009)について述べる。3-3-1.学習サイクル この授業では,図 1 のような学習サイクルを作った。図 1 「事例から学ぶグローバル化社会と私 7―8」における学習サイクル まず,事前課題では,授業で扱うテーマに関する既有知識,自己や知人の経験を思い出して整理するとともに,記事の読解や調べ学習を通じて新たな情報を得る。この事前課題で得られたスキーマに基づき,授業の議論では様々な意見,経験,情報をペアやグループで共有し,受講生は各自の視点や思考を発展させる。そして,授業終了直前または終了後,事前課題と授業の議論で得られた知識や気づきを既有知識・経験と有機的に結びつけ,未来の行動につなげていくために,ふり返りを書く。ふり返りの観点は以下の通りである。1)授業で扱ったテーマについて考えたことや気づいたこと,思い出した自分の経験2)ディスカッションを通じて自分やクラスメートについて気づいたこと3)今後調べてみたいと思ったこと,実行してみたいと思ったこと 受講生のふり返りには毎回筆者がコメントを書く。そして,授業の冒頭で前回授業の主なふり返りの内容を共有し,‘ふり返りのふり返り’を行う。 授業の各回で事前課題シート,教室活動シート,ふり返りシートに調べたことや考えた133

元のページ  ../index.html#137

このブックを見る