早稲田日本語教育実践研究 第5号
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A(良い)* 太字部分が記述を追加したところ   例えば,評価観点項目「(2)内容」の第 1 の観点は,序論にテーマの背景と問題提起が書かれているかどうかである。レポート X には「問題提起」となる文は見られなかったが,「レポートの目的」を「問題提起」と解釈した 4 名は評価を「A」と判断した。しかし,すり合わせの結果,「問題提起」は明確に書くべきであるという見解で一致し,評価は「B」とした。ルーブリックの記述にも「はっきり」書くべきである旨を追加した(表6 参照)。内容 序論:レポートのテーマの背景と問題提起がどちらもはっきり書かれている。・レポートのテーマ背景と,問題提起(一つでも可)書かれている場合。・レポートの目的だけでは問題提起と考えない。 他にも,「分量が適切である」「わかりやすい文章」のように,定量化されていない表現が含まれる評価観点についても,評価のばらつきや判断のしにくさが指摘された。いずれも,評価観点項目,「教員用マニュアル」の記述について,曖昧な部分を明確にした。 再改訂したルーブリックは,第 2 回目以降のレポート活動に使用した。学習者は徐々にその使い方に慣れてきたようで,第 1 稿を書いたあとのお互いのレポートを読むピア活動で積極的に活用していた者もいた。またレポートの目標を書く際に,「構成に気をつけて書く」「引用と自分の意見を区別する」などのルーブリックの項目を意識した目標を書いていた。 ルーブリックの使用について学習者からは,「レポートに必要な要素がはっきりわかった」「修正点がわかりやすかった」「自分のレポートを客観的に見られるようになった」という声も聞かれた。全体的な傾向として,レポート作成ごとにルーブリックの評価が上がっていく学習者が多く見られた。特に「レポート作成の際にルーブリックの項目を意識して書いた」という学習者は最後の 3 回目のレポートは将来的な目標である「A+」の評価が多くなっていった。 本稿では,レポート評価をする際に必要なルーブリックを作成し,その作成と改善の過程について述べてきた。それは,「総合日本語 6」において,レポート作成に対する評価の比重が大きく,各教員がレポートの評価の公平性を担保することが課題であったこと,また学習者がレポート活動を通して,自律的に学習に取り組めるようになるねらいもあったからである。早稲田日本語教育実践研究 第5号/2017/123―130 128表 6 「教員用マニュアル」(一部抜粋)5.学習者の様子6.まとめと今後の課題

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