早稲田日本語教育実践研究 第5号
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B(もう少し)* 太字部分が記述を追加したところ  たれていたといえるであろう。 一方,比較的ばらつきが大きかった 3 段階に評価が分かれた項目は,3 項目であった。そのうち,2 つ(レポート X の「(1)構成」の①構成とレポート Y の「(4)形式」の⑪引用の分量と・情報量)は「A+〜 B」の範囲でのばらつきであった。3­1. で述べたように,「A+」は将来の到達目標であり,「A」は現時点の遂行目標である。また,「A+」と「A」は同じ配点にしてあるため,「A+」と「A」の評価のずれは実質的な影響はないものと考えられる。 3 段階に評価が分かれた「(4)形式」の⑪引用の分量・情報量は「A 〜 C」の範囲でばらつきが生じており,評価に影響が出るものであった。4-2.「ずれ」の要因と改善点 評価観点の「ずれ」が生じた要因は,評価観点項目がない場合(4­2­1.)と評価観点の記述に対する解釈の違い(4­2­2.)の二つの場合であることが判明した。以下にそれぞれの要因とその改善点を述べる。4-2-1.評価観点項目がない場合 ルーブリックに記載がない項目を評価し,指導する必要が生じた場合,評価者独自の解釈によって類似の評価観点が適用されたため,評価にばらつきが生じていた。 例えば,評価観点項目「(4)形式」の第 1 の観点(引用の「分量」は適切か)は,レポート X,Y ともに 3 段階に評価尺度が分かれている。ある評価者は引用の「適切さ」(引用が必要なところで行われているか)を評価する必要があると考えた。だが,この評価観点がルーブリックになかったことから,引用の「分量」の評価観点に「適切さ」を含めて評価した。そのため,「分量」のみの観点で評価した評価者との間に「ずれ」が生じたのである。 すり合わせの結果,引用の「適切さ」は,評価観点項目「(2)内容」の第 2 の観点(データに基づいて意見の根拠を示しているか)で行うこととし,「教員用マニュアル」の記述にその旨を記した(表 5 参照)。内容 本論: データに基づいて自分の意見の論拠を示しているが,客観的で適切なデータではない。・データが信頼できない情報源,例えばウィキぺデイアや個人のブログなどの場合。・データは提示されているが,意見を直接支持する論拠ではない。4-2-2.評価観点の記述に対する解釈の違い 評価観点の記述,「教員用マニュアル」に対する解釈が評価者によって異なる場合,評価にばらつきが生じていた。山同丹々子・高橋雅子・伊藤奈津美・藤本朋美・安田励子/ルーブリック作成と評価観点の「ずれ」の分析 127表 5 「教員用マニュアル」(一部抜粋)

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