この他にレポートの採点結果の記入欄及びコメント欄を追加した「教員評価用ルーブリック」を作成した。採点は「A+」と「A」は「(1)構成」から「(4)形式」までの 4つの評価観点の合計が 10 点満点になるようにした。内訳は「(1)構成」の下位項目である①構成と②段落の下位 2 項目をそれぞれ 1 点の計 2 点とし,「(2)内容」の③序論から⑥の展開・一貫性の下位 4 項目もそれぞれ 1 点の計 4 点とした。また「(3)表現の適切さ」の下位 4 項目と「(4)形式」の下位 4 項目は,それぞれ 0.5 点の計 4 点とした。なお,先に述べたように,現時点の遂行目標は「A」で,「A+」は将来の到達目標である。よって,「A+」と「A」を同じ配点とした。さらに,ルーブリックの使用方法,各記述文についての詳細な説明を加えた「教員用マニュアル」を用意した。3-2.授業におけるルーブリックの使用 作成したルーブリックは,第 1 回のレポート評価に使用した。まず,各担当教員に教員用ルーブリックを配布し,使用方法等を説明した。その後,学習者が第 1 稿のレポートを書く前に,各担当教員は授業で基本のルーブリックを配布し,その見方や,評価項目について説明を行った。次に,学習者のレポート第 1 稿をフィードバックする時に,レポート本体へのコメントとともに,下位評価項目のチェック欄にチェックを記入したルーブリックを返却した。レポート第 2 稿提出後も同様に用いた評価を行い,「教員評価用ルーブリック」を学習者に返却した。 沖(2014)においても述べられているように,ルーブリックが成績評価の公平性を増大させるものであるならば,作成したルーブリック評価表もその公平性が保たれていなければならない。そこで,第 1 回のレポート評価に使用した後,担当教員が評価しにくかった点とフィードバックで学習者から質問が出た箇所を基に,一度改善を行った。さらに,ルーブリックを用いた評価の公平性を確認し,改善点を明らかにするため,筆者らによる評価を持ち寄り,評価観点ごとにすり合わせを行った。4-1.評価観点の「ずれ」 すり合わせには,筆者らにとっては初見の学習者のレポート 2 つ(レポート X,レポート Y)を用いた。これは,初見の学習者のレポートを使用することで,公平性と客観性が保てると考えたからである。 すり合わせでは,5 名が各々ルーブリックを用いて評価し,その評価尺度と評価の根拠について評価観点毎に異同を確認した。 2 つのレポートに対する評価を突き合わせた結果,表 3 のように評価のばらつきが見られた。数字は評価者の人数,塗りつぶし部分はすり合わせの結果,決定した評価である。125山同丹々子・高橋雅子・伊藤奈津美・藤本朋美・安田励子/ルーブリック作成と評価観点の「ずれ」の分析4.ルーブリックの評価の「ずれ」と改善
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