山同 丹々子・高橋 雅子・伊藤 奈津美・藤本 朋美・安田 励子 【ショート・ノート】早稲田日本語教育実践研究 第 5 号 キーワード: ルーブリック評価,レポート評価,評価の公平性,評価観点,自律学習 早稲田大学日本語教育研究センターで開講されている上級前半レベルの「総合日本語 6」は,2016 年春学期現在,同一シラバスで 4 つのクラスがあり,各クラス 2 名の教員がチームティーチングで授業を行っている。授業において学習者は,3 種類のレポートを改稿も含め 6 回書くことになっている。よって,本科目では授業の中でのレポート作成が大きな比重を占めている。そのため,複数の教員がレポートの添削・評価を行う際には,評価の公平性の担保が求められる。さらに,どのようなレポートが求められているのか,改稿の際はどうすればより良いレポートになるのかを学習者に明示的に提示する必要がある。 そこで,「評価の公平性」を担保するとともに,「到達目標提示」「学習者の自律的な取り組み」を目指し,教員と学習者が参照可能なルーブリック評価表を作成した。 本稿ではその作成と改善過程を報告する。 ダネル他(2014)によれば,ルーブリックはある課題について,できるようになってもらいたい特定の事柄を配置するための道具である。つまり,ある課題についての到達目標を明示的に示すことが可能である。さらに到達目標に対しての達成項目,未達成項目を示すことによりフィードバックあるいは評価表としても使用することができる。沖(2014)はルーブリック評価を導入する際の留意点として,①到達目標ごとの成績評価がどのように行われるかが学生に見えること,②成績評価が公平で客観的かつ厳格に行われること,③学習成果のフィードバックが行われることの 3 点を挙げている。チームティーチィングで行われている科目では,評価に複数の教員が関わることが想定されるため,評価の公平性の担保は重要な課題である。複数の教員がレポート評価を行う大学の初年次教育科目におけるルーブリック評価の導入効果を検証した研究に池田・畔津(2012)がある。ルーブリック評価導入前と導入後のレポートの得点率を分析し,ルーブリック評価導入により得点分布率の著しい偏りが解消されたことを示した。ルーブリック評価導入は複数の教員が評価にかかわる際,有用であると言えよう。123―上級前半レベルのレポート課題―1.はじめに2.先行研究ルーブリック作成と評価観点の「ずれ」の分析
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