早稲田日本語教育実践研究 第5号
123/272

徳間晴美・伊藤奈津美/レポート活動を中心とした「総合日本語5」および「総合日本語6」の課題    ・もっと新しい文法を勉強したかった。(B)  ・JLPT 対策で文法の使い方を教えてくれるといい。(C)  ・「総合日本語 6」はレポートが 3 つあるため大変だ。(D)  ・社会問題を学んだあとで,関連するニュースを見たり聞いたりしたい。(D) 以上のように,インタビュー項目(1)「『総合日本語 5』『総合日本語 6』を履修した理由は何か」に対しては,総合日本語科目であるからという理由で,継続して履修する学習者が少なくないことがわかった。インタビュー項目(2)「どのようなことが学べる科目だと思っていたか」では,「6 レベルは 5 レベルとほとんど変わらない」「『文を読むこと』・『書くこと』が多い」など,履修前から学習者間の情報交換で科目に対する知識があり,履修前の科目への期待は比較的低かった。インタビュー項目(3)「一番勉強になったことは何か」のうち,特にレポート活動に関しては,レポートの書き方は学べたという意見がある反面,活動の進め方については,話し方の指導が不十分であることや,学習者同士の取り組む姿勢の違いに関連した批判的な意見もあった。インタビュー項目(4)「『総合日本語 5』『総合日本語 6』でもっと扱ってほしかったと思うことは何か」に関しては,発表や話す機会を求める意見があった。インタビュー項目(5)「『総合日本語』科目はどのような科目だと思っているか」では,授業内容に関しては四技能を学ぶ科目であること,「総合日本語 5」および「総合日本語 6」は読むことと書くことが多いことに言及した。さらに授業が 2 コマ連続であることで,日本語の環境に浸れることや教師が固定されていることを評価する声もあった。インタビュー項目(6)「『総合日本語 5』『総合日本語 6』について,自身の感想およびクラスメートなどから聞いた声(ニーズや不満等)」では,主に聴解,読解,文法に関する意見が聞かれた。まず,聴解に関して,「新聞,記事,インタビューなどを入れてほしい」や「社会問題を学んだあとで,関連するニュースを見たり聞いたりしたい」という要望があった。読解に関しては,少子化や教育問題について意見を求められることへの負担感や読解文をレポートの題材にすることへの抵抗感が語られた。文法については,より難しい文法の学習や JLPT を睨んだ文法説明への要望が高かった。 本調査により,「総合日本語 5」および「総合日本語 6」両科目双方の内容の重なりや,アカデミックな表現技法や,聴解の扱いが不十分であるといった課題が浮かび上がった。 まず,両科目の内容の重なりについて述べる。「総合日本語 5」および「総合日本語 6」では,同じ主教材を使用している。本教材は,「生活」 をテーマとする 1 課〜 5 課,「少子高齢社会」をテーマとする 6 課〜 10 課,「教育」をテーマとする 11 課〜 14 課,「企業と労働」をテーマとする 15 課〜 19 課,「科学技術と人間」をテーマとする 20 課〜 22 課,「自然環境・科学技術と人間社会」をテーマとする 23 課〜 26 課で構成されている。両科目は学習課の重なりはないものの,「総合日本語 5」では 10 課を,「総合日本語 6」では 6課を授業で扱っており,「テーマ」の重なりがある。両科目とも複数回のレポート執筆活動がシラバスに組み込まれているが,学習課からテーマを選択しレポートを執筆する。こ1195.調査ⅠとⅡの考察とまとめ

元のページ  ../index.html#123

このブックを見る