早稲田日本語教育実践研究 第5号
120/272

 以下,表 1 にある調査項目(1) 〜 (5)について,下位項目の回答率に触れながら,調査結果を記述していく。3-2-1.調査項目(1)文法・語彙・表現 語彙については,「語句ノート」の冊子で語彙の確認を行っているためか,6%と回答は少なく,文法に関しては,中上級までの復習を望む回答が 6%,さらには中上級以上の文法が学びたいという学習者が 10%いた。漢字は授業では特に扱っていないこともあり,「読める漢字を増やすこと」は 13%,「書ける漢字を増やすこと」は 27%いた。同じく 27%の回答があったのが「ことわざ・慣用句」である。「ことわざ・慣用句」は授業内容として扱っていないが,中上級レベルでは,表現の幅を広げる段階にあることから,関心が高いと考えられる。同様に,授業で扱っていない「オノマトペ」も 18%と比較的多い回答が見られた。3-2-2.調査項目(2)書くこと 「レポートの構成(序論,本論,結論)」および「レポートに合った文体で書く(だ・である体)こと」の回答率が 1%と低く,「序論・本論・結論」という三部構成や文体,引用の仕方については理解できた,あるいは授業で学んだと認識していることがわかった。一方,実際のレポート執筆にあたっては,「段落の中の構成を考えること」および「段落の間のつながりを考えること」の回答率がそれぞれ 18%と 14%と低くないことから,段落内の文の配置や各段落のつなぎ方で習得しきれていないという自覚があると考えられる。また,具体的な語彙および表現の選択等でも,さらに学びの余地があると感じていることも窺えた。3-2-3.調査項目(3)話すこと 他の項目に比べ,2 割前後の回答率が多く見られることから,全般的に話すことに対する要望が高いことが窺える結果となった。「発表」については,発表資料の作成についての希望は多くなく,「発表に対する質問の仕方」などが 28%であることからも,アカデミックなプレゼンテーションのテクニックを習得したいと考えている学習者が多いことがわかる。「話し合い」については,「抽象的な物事について説明する方法」(24%)が最も多く,「相手の気持ちを考えて意見を言ったり,質問したりする方法」(14%),「理由を示しながら,自分の意見を言う方法」(13%)と続いている。話し合いという活動は授業の中でかなりの時間をあてているにもかかわらず,話し合いで用いる表現や伝え方については指導していないためであると考えられる。また,「日常会話」は授業でまったく扱っていない内容である。中でも,「発音・アクセント・イントネーション」と,「あらたまった話し方」,すなわち目上の人とのやりとりといったコミュニケーションの学習への要望が28%と高かった。3-2-4.調査項目(4)読むこと 多かった回答は,授業で扱っていない「小説の読解」(39%)と「読解ストラテジー」116早稲田日本語教育実践研究 第5号/2017/113―121

元のページ  ../index.html#120

このブックを見る