合,両科目のシラバスには偏りがあるのではないかという点が,筆者らがコーディネーターとしても授業担当者としても抱いていた問題意識である。これについては,学習者のことを考えた場合も同様で,四技能をバランスよく学べる科目であると認識して履修した場合,その期待や目的が達成されにくくなることが懸念された。 そこで,筆者らは CJL における両科目のシラバス見直しのために,実際に授業を履修した学習者を対象として,何を学んだのか,また,何をもっと学びたかったのか,という認識を自己評価の形式で捉える調査を実施した。その結果の分析と考察を通して,両科目の課題を明らかにし,その後の取り組みについて述べたいと思う。3-1.実施概要 調査Ⅰは 2015 年 7 月の春学期末に,筆者らが担当する両科目(「総合日本語 5」の 3 クラス,「総合日本語 6」の 3 クラス)を受講した学習者のうち,調査協力に同意してくれた学習者を対象に,授業時間外の時間を使って実施した。手順としては,調査趣旨等を説明した上で,質問紙によるアンケート調査を行った。最終的には,71 名からの有効回答を得た。 調査は A4 用紙 3 枚からなり,うち 1 枚はフェイスシート,残り 2 枚が選択式(複数回答可)の質問紙となっている。質問紙の内容は,以下に示すとおり,(1)文法・語彙(ことば)・表現,(2)書くこと,(3)話すこと,(4)読むこと,(5)聞くこと,の 5 つの項目を立て,それぞれに下位項目(計 39 項目)を設けた。質問紙の 1 枚目では,「今学期,この授業で勉強したと思うことに☑してください。」という指示文を出し,質問紙の 2 枚目では「今学期,この授業でもっと勉強したかったと思うことに☑してください。」という指示文を記載した。3-2.調査Ⅰの結果 調査Ⅰの結果は,「授業では勉強しなかったが,自分は勉強したかった」と解釈できる回答数,すなわち,質問紙 1 枚目にはチェックを入れていないが 2 枚目にチェックを入れていた回答数を取り上げ,項目別に分析した。主な結果としては,調査項目(1)文法・語彙・表現では「書ける漢字を増やすこと」「ことわざ・慣用句」などの授業で扱っていない項目の回答数が多く,日本語レベルの高まりと共に,表現の幅を広げる必要性を感じていることが示された。調査項目(2)書くことは,構成や文体,引用の仕方については学んだと認識している一方,段落内の文の配置や各段落のつなぎ方は習得しきれていないという実感があることが窺えた。調査項目(3)話すことは,表 1 の回答率に示すように,全般的に回答数が多く,アカデミックなプレゼンテーションの仕方および,話し合いでの伝え方やその表現,目上の人とのやりとりに役立つ表現などに対する要望が高かった。調査項目(4)読むことでは,読み物のジャンルとして「小説」を扱ってほしいという回答が多かった(39%)ほか,「読解ストラテジー」の習得も望まれていた(30%)。調査項目(5)聞くことは,「ニュースの聴解」を選択した学習者が 46% おり,「聴解ストラテジー」の学習を希望する学習者も 24% いた。114早稲田日本語教育実践研究 第5号/2017/113―1213.調査Ⅰの概要
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