上田潤子/名前とアイデンティティ I : なるほど。自分は自分,っていう。I : 中学に入ったとき最初の何ヶ月かは,僕はドイツ語話せない問題もありましたし,I : 将来はどんなことをしたいんですか?I : へえ,すごいじゃない。F: 小さいときはアメリカ人だと思ってたんですけど,中学から海外に行き,おそらく,個人的には中学と高校が一番成長した時期だったので,小さいときは普段「僕はアメリカ人だ」と言い張ってましたけど,高校生になってから僕はなんなんだろうってアイデンティティを考えるようになって,僕の考え方は,小さいときはアメリカ人に近い考え方だったんですけど,今はアメリカ人でもなく日本人でもなくドイツ人でもなくシンガポール人でもなく,なんかその,全部混ざった考え方をしているので。F: そうですね。最近は自分は自分だという考えになっていますね。 幼い頃は自分はアメリカ人だと言い張っていたが,高校生になってからはそれにも疑問を持ちはじめ,現在はいろいろ入り混じった自分をそのまま受け入れているようである。ドイツでは日本人が非常に多いデュッセルドルフで暮らし,はじめは日本人のグループに身を置いていたが,やがて考え方の相違を感ずるようになっていった。さまざまなランゲージベースのハードルがあったので,自然に僕は日本人の学生と会話をしてて,最初の何ヶ月かはそう過ごしたんですが,やはりドイツ語を少しずつ話せるようになってからは,日本人のグループから離れましたね。これは別に個人的に選んだ選択肢ではなく,自然に。ですから,おそらく,それは僕の性格が日本人らしくないということだと思います。 その後はドイツ人のグループのほうが馴染みやすく,ドイツ人と英語とドイツ語を混ぜて話していたという。シンガポールでは,基本的にみんなが英語を話すため,ドイツであったようなハードルはなかった。また,アメリカンスクールはアメリカのグリーンカードを持っている人が優先的に入れるため,日本人でも F のような背景を持つ人が多く,おもしろかったという。■今後のことF: そうですね,あんまり決まってなく,最近もうこの何ヶ月か,もうずっと悩んでたんですけど,父と話し,他の人生経験豊富な方と相談し,あの,弁護士になるのはどうかって勧められたんですよね。それはただその一人の方からだけではなく,何人かからあなたの性格は,考え方はものすごく弁護士に合ってるって言われて。わたしのグリーンカードの再発行を手伝っていただいた弁護士の方からも…… 現在 3 年生である F は,就職について悩んでいたが,最近グリーンカードの再発行で107
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