早稲田日本語教育実践研究 第5号/2017/93―112 「あたしは英語話すとすごく強いオーストラリアのアクセントだと思って嫌だな,と思うんですけど」と英語話者間での評価を気にする一方,自分の英語は出自に縛られない独自のものであるという意識があることも窺える。■日本への帰属感A: 将来は,あたし,海外に住みたいんですけど,でも日本とオーストラリアは海外ってあたし思わないので,うーん,高校の頃は日本にずっと住みたかったんですけど,でも実際日本に住んでみて,なんか,なんとなくいつか日本に来ちゃうって気持ちがあって,あんまりオーストラリアにいるっていう気持ちはないんですね。帰ってくるって感じ?A: 最後っていうか,絶対人生の長い間は日本に住んでるってもうわかってます。いつかそうなるって,なんか。そういう気持ちがあるんですよ。なんか,わかんないですけど。 将来は「海外」に住みたいと思っている。「海外」とは日本とオーストラリア以外のことである。しかし人生のうちの長い時間,日本に住むことになるだろうと予感しているという。「海外」に住むことが冒険や挑戦であるのに対し,日本には絶対的な帰属感,帰ろうと思ったらいつでも帰れるという安心感があるということだろう。4-2.調査協力者 B へのインタビュー 祖父の代が日本からブラジルへ渡った。ブラジルで生まれ,学校もずっとブラジルで通った。2009 年に初めて家族旅行で日本へ来た。祖父は日系ブラジル人だが現在長野県に住んでいる。B は祖父も日本に住んでいるし,もっと日本を知りたいと思い,X プログラムで早稲田に来た。 普段ブラジルでは[ブラジル名]を使っているが,日本では[日本名]を使っている。「覚えやすいから」と語った。 自分はブラジル人だと思っているが,日本人だと思うこともある,という。■日本人であることB: ブラジルにいるとき(笑)。と思いますか?B: そうです(笑)。あ,日本人ですか,って思われて。I : これから,将来,どこに住みたいですか?I : あ,そうなの!いつか日本に帰っちゃうって感じがするの?一番最後には日本にI : どんなときに自分は日本人だと思うんですか?I : ブラジルと日本以外に旅行に行くときもあるでしょ?そのときはみんな日本人だ98
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