早稲田日本語教育実践研究 第5号
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6早稲田日本語教育実践研究 第5号/2017/3―20   今回行った「発表」の活動は,パワーポイントに「書き」,教室で「話す」という自己の言語能力を Output する場であり,また発表後の質疑応答やクラスディスカッションで,学習者がコミュニケーションを取り合い,自己の言語能力を確認できる機会であると想定された。3-1.「自由発表」活動の目的  上記先行研究にあるような学習者の文化的/心理的背景を考慮した上で,学習者に自由に発表する機会を設ける。同時に教師主体の授業ではなく,学習者が主体となり自分の意見や考えを積極的に発言し,またクラスメートと意見を交換し合えるような学習環境を形成する。そしてその環境の中で,「話す活動」を中心とした言語活動を行い,言語習得への足がかりとなることを目標とした。3-2.活動の位置づけ この「自由発表」は,上記のように学習者の「話す活動」,ならびに授業への積極的参加を促すために行われた。そのため,既定のシラバス,スケジュールを変更することなく,またコースワークの他の活動や学習と相乗効果を生むのを目的として位置づけられた。3-3.「自由発表」活動期間 「自由発表」は 2015 年 9 月から 2016 年 1 月に開講された日本語中級クラスで行われた。クラスは週 3 日(月,水曜日は各 3 時間,土曜日は 1.5 時間)15 週間開講され,全体で約112 時間のコースである。そのクラスの中で,「自由発表」は 2015 年 11 月から 2016 年 1月までの毎週水曜日,計 8 週間(途中冬休みのため中断)に渡り実施。3-4.協力者 日本語中級レベルのクラスの学生 15 名。出身国は 15 名中 14 名がアジア圏。3-5.「自由発表」手順 調査期間中,毎授業日(水曜日)に自由なテーマで短い発表(約 10­15 分)を 2 人(最後の週のみ一人)ずつ,計 15 名が一回ずつ発表。発表の順番は協力者が前もって準備することができるよう,発表が始まる前に教師が決めスケジュールを協力者に伝えた。視聴覚の使用は協力者に委任したが,結果として 15 名全員がパワーポイントを使用。発表の後で質疑応答と教師の口頭でのフィードバックを行った。3-6.「自由発表」の内容 15 名の協力者が行った「自由発表」のテーマは以下とおりである。3.「自由発表」の活動と調査の概要

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