研究報告 2015年度本センターの設置科目「漢字」の各レベルにおいてプレイスメントテストとして実施した漢字力診断テスト初級255名分,中級265名分の結果について分析を行った。その結果,両テストともにプレイスメントテストとしての統計的な信頼性が確認された。一方で,中級テストにおいては,漢字圏受験者に天井効果が見られ,改善の余地が示された。 また項目分析と母語や設問の種類,受験者の習熟度を要因とした統計的な分析を行ったところ,母語により正答率に差がある設問と差がない設問があり,こうした母語間の回答傾向の差は,習熟度が上がるにつれ漸減することが分かった。今後,詳細な項目分析を行い,漢字力診断テストの改善に反映させるとともに,各種学会などにて報告する予定である。研究プロジェクト名研究代表者名研究メンバー設置主旨2015年度活動計画2015年度活動実績予算と決算漢字習熟度に応じた強化が必要な要素の解明─漢字診断テストを用いて─山本真理(日本語教育研究センター)岩下智彦(日本語教育研究センター) 漢字の習得には形・音・義の知識に加え,運用の仕方など様々な要素が関わっている。そのため,教師にはこうした要素別の習熟度の的確な把握とそれに応じた指導が求められる。しかし,本センターの漢字科目群クラスは,同一クラスに異なる漢字習熟度の学生が混在することが多く,教師は何を中心に指導すべきか判断に悩んでいる。この問題を解決するため,本研究では初回授業で行われている漢字診断テストの結果を分析し,レベル別・母語別に強化が必要な要素を抽出する。更にこの成果から教師の指導法や熟達度テスト作成に向けた提案を行う。・ 診断テストの設問群(読み,書き,意味判別,熟語作成,反意語・類義語等)の正答率を総合点順に並べ,それぞれのレベル及び,母語に共通する困難点を探る。・ 分析の結果から,(学習者の希望した)「漢字クラスのレベル別」,「母語別」に強化が必要な要素を整理し,各教師・学習者がどのレベルでどのような学習が必要かが具体的にイメージできるようまとめる。費 目旅費交通費手数料・報酬図書資料費消耗品費計予 算4011010011261千円85決 算注)2015年度決算は2016年3月末に確定する。261千円
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