早稲田日本語教育実践研究 第4号
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早稲田日本語教育実践研究 第4号/2016/79―80やCMには様々な仕掛けがあることが皆と分析してみて分かった。」「様々な国と文化の(すぎやま ますよ,早稲田大学日本語教育研究センター)この授業で重点を置いているのはキャッチコピーについてである。キャッチコピーは情報の受け手の注意をひき,興味を起こさせ,記憶に残るという広告の目的の実現に大きく貢献する重要なものである。ある製品や会社などのいろいろな特徴・長所を表示したり,あるいは感覚的に表現したり,連想されるイメージを表現したりする。また語彙の使用や平仮名やカタカナなど文字の選択,キャッチコピーのレトリック技法として反復,比喩,省略や駄洒落などについて分析することは日本語の学習をより深め,促進すると思われる。授業では多くの広告を取り上げている。大学のパンフレットを分析し,キャッチコピーも含め早稲田大学の広告を毎学期制作するが,毎回ユニークなポスターができあがっている。学習の総まとめとしてCMを制作する。その前にCMコンテストの作品,制作の過程や他の国と日本のCM制作の比較などのビデオ視聴,さらにキャッチコピーについての論文やコピーライターの制作についての記事などを読む。最後にレポートについてグループ内で報告する。学生は様々なテーマでレポートを書くが,それを教師だけなく他の学生と共有することは,学生間で学びが生じる。また書いたものを他者に分かりやすく伝えることは,知識や理解の強化にも繋がるとともに,5分でまとめることは,発表のスキルアップにもつながると考える。4.学生の反応毎期行う学期末のアンケートではCMの視聴については「普段何気なく見ている広告違いに気づくことができて,よかった。」というコメントが多かった。CM制作については「皆と一つのものを作るのが楽しくて,達成感がある。」「皆の考えを一つにまとめ,作品を作るのは難しかったが,楽しくためになりました。」「異なる考えをシェアできて,よかった。」などCMをグループで制作することは毎期学生に好評である。全体の感想では「グループ討論によって,皆に話させる工夫を感じた。」「グループで話し合うことが多く,別の人から色々学べる」などがあり,他者と共に活動して,お互いに学んだというコメントが多かった。様々なアプローチで協働活動することによって学生の学び合いが生じ,多様な視点,発想などにも気づけたのではないだろうか。5.今後の課題予習を前提に行う授業なので,予習をしてこない学生の対策が課題である。今後は学生のモチベーションを高め,教室活動をより活性化するために協働活動への取り組み方を工夫していきたい。80

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