早稲田日本語教育実践研究 第4号
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早稲田日本語教育実践研究 第4号/2016/3―6CJLという場自体が「リソースフルな学習環境」,つまり,互いに学び合える学習材料がCJLの第2の特徴は,主体性の重視です。CJLでは,プレイスメントテストによる各自自のシラバスを提案し採用された教員が担当する「テーマ科目群」の2本の柱で成り立っています。前者の「総合科目群」は,初級から中級の学習者を対象に,標準化されたシラバスと教材によって,四技能をバランスよく学ぶ科目です。後者の「テーマ科目群」は,俳句や演劇といった創造性豊かなものから日本企業への就職に役立てようとする実用的なものまで,個性豊かな幅広いテーマで科目が展開されています。テーマ科目に付されたキーワードをみても,「読む」「話す」など言語学習の四技能を中心としたものや「発音」「語彙」「文法」などの言語要素に関するものにとどまらず,「理系」「映画・ドラマ・演芸」「創作する」「仕事」「生活」「自分」など,専門的なものや芸術に関するもの,実用的なものなど,多様であることがうかがえます。「総合科目群」と「テーマ科目群」というCJLにおけるカリキュラムの2本の柱は,前者は,留学生数の増加に対応すべく高い質をもった授業を安定して提供するという「安定性」を保証するものとして,また後者は,多様な学習者たちの興味や関心に応えつつ言語教育としての「先進性」を重視したものとして整えられてきました。これらの科目群の多様性に加え,学習者たちの多様性もCJLの大きな特徴となっています。世界中の105の国・地域からの留学生は,それぞれ多様な専門性をもった学部生,大学院生たちであり,またビジネス経験をもっている学習者もいます。今まで育った環境も違えば関心をもって学んでいることも違います。また,多くの日本語授業には,日本人学部生や大学院生がボランティアとして参加していることも,大学の中にあるCJLの強みといえます。異なったことば,文化,経験など,多様な背景をもった人々が学び合う豊かにある場といえるでしょう。2-2.CJL学生に求められる「主体性」の日本語レベル判定を参考に,学習者が自分に合ったプログラムを組み立てます。先にあげた「総合科目群」と「テーマ科目群」の中から,それぞれの目標や興味,関心に応じて科目を選択し,自分にふさわしいプログラムを自分自身で構築するのです。こうした「私のプログラム」を提供することこそ,CJLの主体性重視を端的に表したものだといえるでしょう。一方,いきなり自分で科目を選択して「私のプログラム」を作成することに不安を覚える学習者が存在することも確かです。そこで,学習者のこのような主体的な学びを支えているのが,「わせだ日本語サポート」というサポートシステムです。「わせだ日本語サポート」は,早稲田大学で学ぶ留学生の日本語学習や留学生活を応援するために,2011年に設置され,日本語教育研究科の院生たちがスタッフとして支援活動を続けています。「わせだ日本語サポート」では,日本語学習に関するさまざまな情報が得られたり,日本語そのものに関する質問ができたりすることもさることながら,日本語の学び方等について相談ができることが大きな特徴となっています。自分自身の日本語学習の方法や計画について,スタッフといっしょに考えることによって,学習者それぞれが自分の学習に関して,さまざまな気づきを得て,自身の学習を主体的に進めていくことができるようになりま4

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