早稲田日本語教育実践研究 第4号/2016/63―64(まえがわ たかこ,早稲田大学日本語教育研究センター)における適切な論拠を,最近のニュースや出来事,調査による情報,体験の何れかとしていたので,これにそって日本語学習者用教材の『みんなの日本語初級Ⅱ初級で読めるトピック25』(2009),『みんなの日本語初級第2版やさしい作文』(2014)からモデル文を選びリライトなどをした。2回目の授業では,テーマに関するブレーンストーミングを行うことになっていた。著者作成の資料と1回目のモデル文を使いながら,意見文の概念を示し,話し合いによって意見文の内容を決めてもらった。著者が作成した資料は国語教科書の内容にもとづき,意見文の特性や構成,文章表現などをまとめたものである。3回目の授業では,ピア・レスポンスを行うことになっていた。著者が作成した補助シートを使い,提出された作文について,ピア・レスポンスを二人一組で行った。補助シートは,意見の明確さ・論拠の有無・論拠の適切さ・構成の適切さを検討するものである。4回目の授業では,ピア・レスポンスにもとづいて再提出をしてもらった作文の発表を行ったり,コメントをし合ったりすることになっていた。実際の授業では,これまでに配布したプリント,2回目に提出してもらったクラス全員の意見文,4回目の授業で行う学生同士のコメントを記入する用紙,コメント例という4種のものを綴じた冊子を作り,各人に配布した。そして,発表を行い,冊子にコメントを書いてもらうことにした。なお,コメント例は国語教科書を参考にリライトし適切に表現できるよう工夫したものである。4.まとめ定量的な分析は行っていないが,いくつか気付いた点を記すと,最初に提出された意見文で,モデル文よりも難しい内容のものを書いてきた学生が多く,その意味で,初期段階の指導は,おおむね良好だったと思う。一方,ピア・レスポンスは,作文を修正して提出できる学生とそうではない学生に分かれた。このような差異が出たことは,幾つかの要因が考えられるが,今後検討を重ねていきたい。教授者の立場から言えば,初級後半レベルの学生に意見文を書いてもらう場合の導入プロセスの枠組みを得ることが出来たと考える。参考資料牧野明子・沢田幸子・重川明美・田中よね・水野マリ子(2009)『みんなの日本語初級Ⅱ初級で読めるトピック25』スリーエーネットワーク門脇薫・西馬薫(2014)『みんなの日本語初級第2版やさしい作文』スリーエーネットワーク学校図書(2012)『中学校国語2』教育出版(2012)『伝え合う言葉 中学国語2』三省堂(2012a)『中学生の国語二年』,三省堂(2012b)『中学生の国語―学びを広げる二年』東京書籍(2012)『新しい国語2』光村図書出版(2012)『国語2』64
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