早稲田日本語教育実践研究 第4号
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前川孝子/中学校国語教科書の学習内容を活用した授業科目名:総合日本語レベル:初級1・2/中級3・4・5/上級6・7・8履修者数:15名前川 孝子b.授業配分が当該授業の授業配分時間と概ね一致している。c.意見文の構成が明示的であ早稲田日本語教育実践研究 第4号 1.はじめに本稿では,中学校国語教科書の学習内容を活用した意見文の授業について報告する。なお,当該授業は総合日本語2の書く活動での取り組みである。書く活動では,1回目に説明文,2回目に意見文を学習する。意見文の授業回数は4回で,その目標は600〜800字程度の字数と3段落以上の構成で書くことであった。授業の大枠は決められているが,①モデル文として何を取り扱うか,②ピア・レスポンスでは,作文についてどのようなことを話し合うか,③作文発表時のコメントはどのように行うか,④意見文の内容上の到達目標をどこに置くかについては,教師自身の裁量に任されていた。そこで,平成24年(2012)発行の中学校国語2学年用採択教科書全6冊を用い,意見文の学習内容や学生同士の相互評価などを取り入れることにした。中学校国語教科書の意見文の学習内容を利用することには,5つの利点を挙げることができる。a.教師の裁量に任されていた4つの点が教科書に掲載されており,参考となる。る。d.中学校国語の意見文では,意見文を書くこと自体に興味がない学生に対していかに学習意欲を持たせるかといった工夫が施されている。e.日本語を母語とする読み手にとって論理展開が理解しやすい文章を日本語学習者が作成することに活かせると考えられる。2.授業の方針上記のとおり教師の裁量に任されていた教授項目について,以下のような方針を立てた。①論拠が明確に示された意見文を教師が例示する。②学生同士で補助シートを用い互いの意見文を検討する。③教師は具体的なコメントの例を示し,学生が作文発表時に無理なく意見を出しやすくする。④教師は意見文の必要条件を明示し,学生がそれに沿った文章が書けることを到達目標とする。そして,具体的には,以下のように授業を行った。3.授業で行った取り組み1回目の授業では,モデル文を読むことになっていた。中学校国語教科書では,意見文【実践紹介】63中学校国語教科書の学習内容を活用した授業―意見文の場合―

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