早稲田日本語教育実践研究 第4号
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早稲田日本語教育実践研究 第4号/2016/61―62(ユン ジヒョン,早稲田大学日本語教育研究センター)(いわさき ひろよし,早稲田大学日本語教育研究センター)(チョン ヤンウォン,早稲田大学日本語教育研究センター)な各自の状況や経験を共有できるように工夫した。さらに学習者の「個人化」(川口2004)を促すためには教師自身の個人化も重要であると考えた。そこで,教師自身の生活に関連する写真をテレビ会議システムの画面上でシェアするなど,教師自らの個人化にも心がけた。その結果,学習者からの自然な質問を引き出すことにつながり,学習者が自ずと自分のことを話すように動機づけを促すこともできた。3.実践の成果と課題オンライン日本語コースの最大の特徴は,インターネットにアクセスできる環境であれば,どこでも受講できるという点である。実際今学期も,普段は自分の研究活動で忙しく,調査や学会参加で国内外の移動の多い大学院生に日本語学習の機会を提供することができた。この点は遠隔チュートリアルの参加者からも高い評価を得ており,複数の学生がオンライン日本語コースで学習を続けたいと述べていた。一方,本コースを正規の科目として定着させ,そのメリットを最大限に生かすためには,まだ様々な課題が残されているのも事実である。第一に,自律学習を実現し,多様な相互作用を確保するためには更なる工夫が求められる。とりわけ反転授業型実践を成功させるには,教授活動だけでなく,学習者の自律学習を促す支援と働きが必要となる。そのためにも,BBS機能を使うなど双方向性のコミュニケーションを取り入れることが重要であろう。第二に,書く練習や文字を打つ練習の導入である。本コースのオンデマンド講義や遠隔チュートリアルでは通常の初級コースと異なり,書くことや文字を打つことの導入や練習がほとんど含まれていない。今後,検討すべき課題の一つであろう。第三に,安定的なシステムの利用環境を確保することである。教員側だけでなく学習者側の接続トラブルやシステムの不具合は遠隔チュートリアル全体に支障をきたす場合がある。実際,学習者側の利用環境をコントロールすることは現実的に困難な部分もあるが,ヘッドセットを着用することで,エコーやノイズの問題を軽減できることなど,学習者がトラブルを回避・解決できる方法について情報を収集し,マニュアル化することも必要であろう。以上のような問題点を改善し,同期型と非同期型を併用したeラーニング日本語コースを提供することで,多様な日本語学習者に対して学習機会の拡大を図ることができる。参考文献川口義一(2004)「表現教育と文法指導の融合―『働きかける表現』と『語る表現』から見た初級文法」Canadian Association for Japanese Language Education. Vol.6, 57-70.62

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