早稲田日本語教育実践研究 第4号
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1.はじめに2015年度春学期より,早稲田大学日本語教育センターでは初級日本語学習者を対象としたオンライン日本語コースを開講した。本稿では,オンライン日本語コースの中で最初に開講された科目である「総合日本語(オンデマンド)1(1)」の実践について,テレビ会議システム(Live On)を介して行われた遠隔チュートリアルを中心に報告する。2.実践の方法「総合日本語(オンデマンド)1(1)」は反転授業の形式をとっている(図1を参照)。そのため,遠隔チュートリアルにおいては,各回の学習項目である語彙と文法を一から説明する必要はない。しかし,学習者がオンデマンド講義を完全に理解・習得しているかどうかはわからない。そこで,毎回のチュートリアルの始めには,当該項目の理解・習得の確認を行ったうえで,会話運用練習をするように心がけた。また,遠隔チュートリアルでは,教師と複数名の学習者がテレビ会議システムを使って会話をするため,発話ターンを取ることが難しい。そのため,学習者同士の会話練習をするときには,「Aさん,Bさんに質問してください」のように,教師主導で明示的に発話順を示すようにした。しかし,会話の内容によっては,学習者AとBの会話にCが入ってきたり,そこに教師も参加したりして,よりインタラクティブな展開になることもあった。一方,オンライン日本語コースでは,対面授業と異なり,授業の合間や休み時間中に学習者同士が交流することなどができない。そのため,チュートリアル・セッション中に,できるだけ互いのことを知ることができるよう,学習者同士のやり取りを重視した。例えば,各回のチュートリアルの冒頭では,ウォーミングアップとして,「週末は何をしましたか」など,お互いの生活がわかるようなやり取りを入れた。ほとんどの時間を研究のために使っている学習者もいれば,毎週末のように旅行をしている学習者もいて,そのよう尹智鉉・岩崎浩与司・鄭良媛/反転授業型オンライン日本語コースにおける初級日本語学習者向けの遠隔チュートリアル早稲田日本語教育実践研究 第4号 科目名:総合日本語(オンデマンド)1(1)レベル:初級1・2/中級3・4・5/上級6・7・8履修者数:5名図1 本コースにおける日本語学習のプロセス【実践紹介】61反転授業型オンライン日本語コースにおける初級日本語学習者向けの遠隔チュートリアル尹 智鉉・岩崎 浩与司・鄭 良媛

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