早稲田日本語教育実践研究 第4号
63/112

注 多賀三江子/ボイストレーニングを活用した初級日本語クラスの教室活動5.まとめ(たが さえこ,早稲田大学日本語教育研究センター)習者にこのように伝えただけでも,学習者は「あー」と声を出し,自分の声が以前より響くようになることを実感できる場合もある。そのときに,タイミングよく,コーラスなどを取り入れ,動詞の変形ドリルや,ミムメムなどを行うと,学習者は意欲的にそれらに取り組み,時には,教室中に,合唱のように学習者の声が響き渡ることもあり,教室活動全般にメリハリや活気が出ることもある。そして,それ以降は,教師が,あえて伝えなくても,発話時に背筋を伸ばし,発声を自然に意識するようになる学習者も多い。また,音読の際など,口や唇をできるだけ動かすよう伝える。そうすることにより,声がクリアに聞こえることが多い。このときは「アナウンサーになったつもりで,発声してみてください」と伝えると,学習者自身も更に意欲的になる場合が多い。ボイストレーニングは,教師側にとっても,学習者側にとっても,教室活動を行う上で,有効なツールであると思われる。日本語教師も学習者も,今後,幅広く積極的に活用してもらいたい。1) 筆者は,パワフルヴォイスヴォーカルスクール渋谷校にて,ボイストレーニングのレッスンを受講した。2) この図は,白石(2014:10)を一部改良したものである。3) この図は,白石(2014:11)を一部改良したものである。参考文献岡崎敏雄・長友和彦(1991)「日本語教育におけるティーチャートーク―ティーチャートークの質的向上に向けて―」『広島大学教育学部紀要』第2部第39号,241-248.白石謙二(2014)『良い声に変わって音域も広くなる!即効ボイストレーニング』成美堂出版戸田貴子(2003)「外国人学習者の日本語特殊拍の習得」『音声研究』7巻2号,70-83.戸田貴子(2007)「日本語教育における促音の問題」『音声研究』11巻1号,35-46.戸田貴子(2008)「『発音の達人』とはどのような学習者か」戸田貴子(編)『日本語教育と音声』くろしお出版,61-80.梁凱傑(2013)「聴解ストラテジーを用いた教授法の可能性と問題点―学習者のインタビュー分析から―」『日本学刊』第16号,24-41.59

元のページ  ../index.html#63

このブックを見る