早稲田日本語教育実践研究 第4号
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多賀三江子/ボイストレーニングを活用した初級日本語クラスの教室活動4-2-1.教師の発声練習以下に,筆者が行っているボイストレーニングについて,白石(2014)の記述及び,筆者の体験したボイストレーニングのレッスン1)を基にして述べる。①ウォーミングアップ最初に,ボイストレーニングを行う前に,ウォーミングアップを行う。アスリートが競技前にウォーミングアップすることが必要なように,発声にもウォーミングアップは不可欠である。ウォーミングアップに関しては,以下の効果がある。筆者は,授業前に以下のようなウォーミングアップ(全身)を行っている。まず,思い切り手を上に伸ばし,背伸びをする。そして,あくびをする(図1参照)。次に,首を回したり,ジャンプしたりして,体の筋肉をほぐしていく。②腹式呼吸次に,腹式呼吸を行う(図2参照)。やり方は,おへそに力を入れて,ゆっくり息を吸い,これ以上吸えないところまで息を吸い続ける。このとき,できるだけお腹にたくさん息をためるようにする。そして,極限まできたら,ゆっくり吐いて息を出し切る。これを数回繰り返す。人が発する声というのは,という3つのメカニズムからできている。声が小さい人,つまり声量が少ない人は,いくらマイクを通しても弱々しく声がきこえるものであり,そのほとんどが胸式呼吸や,肩式呼吸をしている。そうなると,腹式呼吸に比べ空気を吸う量が少ないので,声帯を振動させることができないが,腹式呼吸は,肺の下にある横隔膜を下げ,肺が大きく広がることにより,多くの空気を取り入れる呼吸法であるので,腹式呼吸ができると,声量が豊かになり,声に安定感が出る。図1 あくび2)図2 腹式呼吸(白石2014:59)1. 心の緊張をとる。2. 余分な力が入っている筋肉をほぐす。3. 動かしたい筋肉を目覚めさせる。1. 肺に蓄積された空気を吐く。2. その空気で声帯を振動させ,音をつくる。3. その音を口腔,鼻腔,咽頭などで,共鳴させることによって増幅させる。57

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