2 早稲田日本語教育実践研究 第4号/2016/1―2Waseda Vision 150では早稲田における留学生数を2032年までに2倍の1万人にするとし(くろだ かずお,早稲田大学国際学術院)寮で生活した。ここには日本語学校が併設してあり,多くの日本での大学進学を目指す学生が会館で生活し,学んでいた。会館に住む数少ない日本人として,日本語学校の学生とはできるだけ日本語でコミュニケーションをとろうとしていたが,言葉の不自由な場所で生活することの大変さと彼らの日本留学にかける思いを,彼らとの時間から学んだように思う。そうした経験から,私が学んだことは何か。語学教育は,留学生にとって,その土地での勉学のためだけではなく,その文化や社会を知り,その土地の人々との絆を育むための「窓」のようなものだということだった。「窓」が開かれた時,留学生にとっての,その学びと人生へのインパクトは非常に大きいものがある。しかし,「窓」を開くためには,留学生も,そして語学を教える側も大変な努力を要する。早稲田には現在5000名以上の留学生が学んでおり,この数は日本の大学で最大数である。このうち,約半数が日本語の課程で学び,後の半数が英語の課程で学んでいるが,日本語の課程の学生だけではなく,英語の課程の学生にも日本語教育のニーズは大きい。ている。早稲田における日本語教育のニーズは高まるばかりである。日本語教育研究センターが提供する日本語の授業数やその受講生の数も増加を続けている。早稲田の日本語教育は,質量ともに,日本,つまりは世界最高の水準にあり,世界の日本語教育をリードする役割を有しているといえる。ただ,そうした大きな数の陰には,日本語の先生方お一人お一人が,一人一人の留学生に向き合ってされてきた努力の積み重ねがある。早稲田で学ぶ,そして日本で学ぶ留学生にとって,豊かな学びと人生を得られるような「窓」としての早稲田の日本語教育の発展を期待したい。
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