多賀三江子/ボイストレーニングを活用した初級日本語クラスの教室活動キーワード:発声,ボイストレーニング,聴解,腹式呼吸,ティーチャートーク1.はじめに2.聴解の難しさ3.ティーチャートークa. 日本語のネイティブスピーカーのインプットを理解可能な形で提供する貴重な場b. 日本語のネイティブスピーカーの談話の流れを経験する場である。多賀 三江子早稲田日本語教育実践研究 第4号 授業のときに,「先生の声が小さくて聞こえない」,「あの先生は,何を言っているのか,はっきりわからない」と学習者が話しているのを時々耳にする。日本語教師は,教室活動では様々な場面で,明確で聞き取りやすい発声をするべきであり,特に初級レベルは,その必要性が高いと考える。また,学習者自身も,教室活動で,明瞭に発声することを意識化することは,日本語学習上,有効であると考える。そこで,筆者が,初級レベルの日本語クラスで,毎回授業前に,行っているボイストレーニングと,その理念を活用した,学習者に対する発声指導について,本稿で紹介する。梁(2013:24)は,「聴くこと」は,読む,話す,書くという三つの技能と異なり,自分のペースで行うことが難しく,リアルタイムの特性上,「読む」ことと違って辞書などを利用することも難しい。それ故,他の言語行動と比較して,習得することが困難であるとしている。従って,以上のことを改善するには,教師のティーチャートークも大きな役割を持っていると考える。岡崎・長友(1991:242)は,ティーチャ―トークの意義について,次の3点を挙げている。である。【ショート・ノート】55ボイストレーニングを活用した初級日本語クラスの教室活動―教師と学習者の明瞭な発声のために―
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