佐野香織・太田亜樹子・高千叶・東雅江/学習支援者が経験したETP30ラーニング・コモンズ5-1.イントロダクトリー期における「ラーニング・コモンズ」・アドバイザーのふりかえり(1)学習支援を考える「きっかけ」「ラーニング・コモンズ」来室の最初のきっかけ・アドバイザーと知り合う機会として,未習者レベルでは授業でアドバイザーに質問する課題があった。それはまた,アドバイザーにとっても学習支援のあり方を考える最初のきっかけとなっていた。「最初,誰かに質問することという課題が出ていたため,アドバイザーに質問に来ていた(週末何をするかなど)。「ラーニング・コモンズ」に来るきっかけという点では良かったのだが,アドバイザーの人数が少ないため,答えがどの研修員に対しても同じようになってしまう」(2)アドバイザーとしての役割の自負さらに,「ラーニング・コモンズ」の場にいるアドバイザーとして,研修員の学びにどのように関わっていくのか,研修員のニーズから自分の役割について考えはじめていた。「初級の研修員がよく訪れて下さり,文法などの基礎知識についての質問や,宿題の補助がメインでした。しかし,利用してくださる研修員は基本決まっていて,なじみのあるアドバイザーのところによく来てくださるような気がしました」「よく顔を出す研修員については,その研修員の興味関心,日本語の癖などについてもよく分かるようになってきて,アドバイスもより的確にできるようになってきたのではないかと思う」「セッション後の振り返りシートは,学習内容をメインに記録していた。気づいたことも時々記入したが,研修員にも簡単な感想を聞き,書き留めておくと良かったかもしれない」(3)アドバイザーとしての役割のゆらぎ一方で,こうした学びの関わり方に一定方向の固定化が見られる懸念も感じ始めた。「「ラーニング・コモンズ」に来る研修員がだんだん固定されてきたのは残念である」「入門・初級段階の研修生に語彙,文法,文型などを説明するためには,やはり媒介語(英語)での伝達が必要だと思う」これらの言葉からも,当初イメージしていた「アドバイザー」という立ち位置よりも,質問に答えて「教える」役割,チューター的な役割をイメージして「ラーニング・コモンズ」に関わり始めていた。(4)アドバイザーの役割再考さらに,「ラーニング・コモンズ」という教室ではない一つの「場」で研修員と関わる49
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