早稲田日本語教育実践研究 第4号/2016/45―542.ETP30期のプログラム構造と学習支援ETP30に参加した研修員は,EU圏企業に所属するビジネスパーソン総勢22名(男性3.ETP30期における「ラーニング・コモンズ」設計の背景本学におけるETPのプログラムは,1月から11月まで行われる。「ラーニング・コモンズ」は,イントロダクトリー期とインテンシブ期(1月〜7月)に設置された(図1参照)。イントロダクトリー期は,ビジネスコンポーネントの授業がなく,終日日本語授業で構成される日本語集中学習期間である。インテンシブ期(インテンシブ1期・2期・3期の総称)からは,午前中に日本語,午後にビジネスコンポーネント関連授業7)という構成になり,日本語の授業時間は減るが,学びの対象の幅は広がる。14名,女性8名)である。多くの研修員にとって,今回が初の長期日本滞在経験であった8)。そのため,来日してすぐに慣れない社会の中で集中的に日本語を学習する「学生」になることは,簡単なことではなかったようである。特に最初の集中日本語学習期であるイントロダクトリー期の日本語学習に困難を訴える研修員が多く,ETP28期,29期にも授業時間外に日本語学習支援の措置をとってきた。しかし,支援の対象はクラス学習のペースについていけない個人に目が行きがちとなってしまうことが問題となっていた。研修員には,自分で自分の学びを作っていきたい者も存在する。個人の学びだけではなく,参加する研修員全員の学習支援をどのようにしたらいいのかということは,ETP30プログラム開始前からの課題であった。本学に既存する日本語学習サポート機関との連携も検討したが,ETPの特殊なプログラム構造と,日本語学習サポート機関の活動時間があわないという問題があった。また研修員は,大学生とは異なる背景,学習動機で学ぶ「おとなの学習者」(三輪2011)であることも配慮すべきことの一つであった。こうした課題を乗り越えるための学習の「場」を考えるにあたり,参考にした学びの場がラーニング・コモンズである。ラーニング・コモンズは,アメリカの図書館から発展した概念である(山内2011)。マクマランによると,ラーニング・コモンズとは「図書館機能,情報技術,その他のアカデミックサポートを統合したもの」(McMullen 2008)と定義されている。ここにある「図書館機能」という言葉からも分かるように,ラーニング・コモンズは一般的には図書館に設置されているものである。しかし,「ラーニング・コモンズは,情報を知識に,知識を図1 ETP30プログラムの主なスケジュール46
元のページ ../index.html#50