表7のイ形容詞のうち「確からしい」は,化学・物理・経済の専門連語にはなく(小宮表7のナ形容詞6語のうち下線のある4語は,専門語である。それらに関して,書きこで15種(75.0%)を占めた。小宮千鶴子/理工系留学生のための数学の専門連語の選定表7 専門連語に使用された形容詞イ形容詞 ない5,確からしい3,等しい2, 大きい1,高い1ナ形容詞 共通な2,特別な2,微分可能な3 独立な2,連続な2,排反な16.おわりに専門連語は,動詞との専門連語と比べて,2語の専門語から成る専門連語が多いため,日本語学習者には難度が高い。5-5.形容詞との専門連語形容詞との専門連語22種は,連語を構成する2語が専門語か否かなどの点から次のように4つに分けた。a)〜c)は専門語と一般語,d)は2語の専門語から成る。a)とb)a)専門語+形容詞 b)形容詞+専門語 c)専門語(形容詞)+名詞 d)専門語(形容詞)+専門語 形容詞との専門連語22種に使用された形容詞22語の異なり語数は11語で,内訳はイ形容詞5語とナ形容詞6語でほぼ同数だった。2006a, 2007b, 2010),数学に特徴的といえる。「確からしい試行」「全事象が確からしい」など確率に関して使用される。とば均衡コーパスの「少納言」(http://www.kotonoha.gr.jp/shonagon/search_result)で用例を調べた。「微分可能な」は数学の用例が多いが,「関数が微分可能だ」などの述語の用法が大半で,「微分可能な連続関数」という連体修飾の用法は1例のみだった。「独立な」は「独立な力」(哲学)「独立な人格」(法学)など数学以外の分野においてもナ形容詞の用例が確認された。「連続な」は「連続な値」「連続な関数」「連続な写像」など数学の用例が中心だった。「排反な」は,「排反」の用例自体が「少納言」にはなかった。Yahoo! Japanで「順番も含め完全に一致」という条件で検索すると,「排反な事象」は約840件ヒットし(2016年1月31日閲覧),ざっと見た範囲ではいずれも数学の確率の用例だった。形容詞との専門連語は少数だが,イ形容詞の「確からしい」やナ形容詞の専門語との専門連語には,数学の特徴が表れているといえよう。本研究では,高校の数学教科書の索引調査を基に選定した「理工系留学生のための数学の専門語」133語について,専門概念を表し有意義な用法を示す専門連語を同じ教科書の9種 (45.0%) 最小値がない,確率が等しい6種 (30.0%) 確からしい試行,共通な要素1種 6種 微分可能でない点独立な解,連続な関数35
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