早稲田日本語教育実践研究 第4号
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早稲田日本語教育実践研究 第4号/2016/25―44Howarth(1996:92)は,法学に関する文章に使用された動詞の連語を分析し,分析対象Bergenholtz & Tarp(1995:118)は,専門辞書学の立場から専門語の連語をtrivial combinationとcollocationに二分し,前者を“ein Buch kaufen(buy a book)”など他の多くBergenholtz & Tarpは,専門語辞典にはcollocationのみのせると述べているが,trivial combinationとの区別は編集者間でも一致が難しいとし,両者の違いに関する考察はない。cgi)の構築時における専門語の連語の記述方法について述べている。連語の収集方法に小宮(2006a)「理工系留学生のための数学の専門語」173語8)は,高校卒業程度の数学用語の選定を目的に,2002年度使用の「数学Ⅰ」「数学Ⅱ」「数学Ⅲ」の全教科書計72冊の索引からいずれか1科目の半数以上の索引に掲載された用語を選定したものである。日本留学試験のシラバスより広範囲の専門語を選定しているが,調査年度の全教科書索引から選定しているため,高校卒業程度の用語が選定されたといえる。そこで,本研究では小宮(2006a)を採用する。文部科学省(2007)「数学用語対訳一覧」は,「学校教育におけるJSLカリキュラム(中学校編)─数学科─」の付録として示されている。この一覧は,数学の専門語470語のほか教科書・授業の表現などを含むが,高校で増加する高校初出の専門語を欠くため,本研究では部分的に使用する。日本学生支援機構大阪日本語教育センター編(2011)『留学生のための理科系専門用語辞典』には,数学基本用語が含まれる。水落他(2010)によれば,日本学生支援機構大阪日本語教育センターで使用中の数学の教科書や問題集,日本留学試験のシラバスを資料にして設問と解答などで使用頻度の高い動詞も含めて約730語を選定している。専門語の選定資料が特定機関の少数の教科書と問題集に偏っているため,選定結果が高校卒業程度の数学用語を代表するかという点で,やや疑問がある。連語の研究はコーパスの発展とともに活発化したが,専門語の連語の研究は一般語の連語ほどには盛んではない。の一部には“publish a bill”(法案を公布する)など専門語の連語が含まれている。だが,著者の関心は,専門語と共起することによって動詞の意味が専門的に限定されることにあり,専門語の連語への関心は薄い。の語と可能な組み合わせとし,後者を“ein Buch aufschlagen(look up in a book)”などその語ならではの独特の組み合わせとしている。前者は「集合を考える」などの非専門連語(後述),後者は「集合に属する」などの専門連語(後述)にほぼ相当すると思われる。LʼHomme(2009)は,用語学の立場からフランス語のコンピュータ操作用語とインターネット用語のデータベースDiCoInfo(http://olst.ling.umontreal.ca/cgibin/dicoinfo/search.関しては,上述の二つの分野に関するテキストコーパスを拾い読みしながら,コンコーダンサーを用いて,名詞の専門語と共起する典型的な名詞,動詞,形容詞を抽出するとしている。つまり,専門語の連語は用語学者の直観に基づいて典型的な連語のみが選定され,典型的な連語と非典型的な連語との相違に関しては,言及がない。小宮(2002)は,専門語の連語を連語として専門語とは別個に専門概念を表すか否かという観点から,専門概念を表す「専門連語」と専門連語を表さない「非専門連語」とに分類した。「集合に属する」など専門連語は,専門語を含み,かつ,専門語とは別個に連語28

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