早稲田日本語教育実践研究 第4号/2016/7―23〜mと同様に学習者による記述内容である。結果は,⑦「役に立たない」3名,⑧「何「学習者の評価A」は「セルフ・フィードバック」の活動に対して,「とてもよかった」「よかった」と高評価の回答をした学習者に,その理由を選ぶにあたり選択肢を提示したものである。選択肢は表1にある①〜⑥の6択とした。また選択肢①〜⑥の下にa〜mで記述している内容は,学習者がその選択肢を選んだ理由について自由に記述したものである。①「自分の学習を反省できた」31名,②「先生からのコメントがもらえる」19名,③「苦手な字が分かった」19名,④「中間,期末試験前に見直せる」18名,⑤「記録するのが楽しい」5名であった。「学習者の評価B」は,「セルフ・フィードバック」の活動に対し,「あまりよくなかった」「よくなかった」と低評価の回答をした学習者に具体的に何がよくなかったのかを問うたものである。回答するにあたっての選択肢は表1にある⑦〜⑬の7択とした。l〜mはaを書けばいいのかわからない」2名,⑨「自分は漢字ができるからシートは必要ない」,⑩「書くのに時間がかかる」,⑪「意味がない」,⑫「大変」がそれぞれ1名であった。「学習者の評価A」において,「セルフ・フィードバック」の活動に肯定的な評価をした学習者の具体的な理由を見ていくと,a〜dは自分の誤りを意識的に集中して学ぶことについて述べており,本実践が自己の誤りに着目していたことを認識しているといえるだろう。これは「セルフ・フィードバック」を通して,自己の誤りに対する気づきが生じたことを示していると考えられる。そのうえで①「自分の学習を反省できた」と好意的な評価を下している点において,「セルフ・フィードバック」は学習者にとって意味のある活動であったといえる。さらにe,fでは,学習者が「セルフ・フィードバック」の活動を単にテストの誤りを記録する活動としてではなく,自己の漢字の誤りや偏りを認知的に捉える時間としていたことがわかる。i,kにおいては,学習者の学習成果を蓄積するものとして機能していると捉えることができ,それはFBシートがポートフォリオ的役目を果たせたからこその記述であると推測することができる。さらに本実践のねらいとしていたわけではないが,jのように授業開始時という早い段階で実践のねらいである自分の漢字の誤りを認識できたという評価が見られたのは,今後さらに「セルフ・フィードバック」を活用していくための手がかりとなり得るだろう。①「自分の学習が反省できた」および③「苦手な字が分かった」は,「セルフ・フィードバック」の実践を行うにあたり,設定したねらいであるため,上述の学習者の記述内容からも,実践を通し,そのねらいは達成したといえる。④「中間・期末試験前に見直せる」は実践において意図したものとは異なるがFBシートの活用方法の1つとして見なすことができる。②「先生からのコメントがもらえる」,および⑤「記録するのが楽しい」は,これほど学習者の反響が大きいことは予想してなかった結果であった。しかし,④「教師のコメントがもらえる」ことについて,hの記述を見ても学習者が教師からのコメントに意味を見出していることがわかる。また,これはFBシートの記入回数が増えると共に,教師に対して質問を投げかけるような記述が増えたことからも明らかである。これは,学習者の教師に対する自己開示の現れであるといえる。具体的には,FBシートを始めた当初は学習者の記述内容が教師が書くように指示した内16
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