早稲田日本語教育実践研究 第4号/2016/7―23以下は授業最終日に行った「セルフ・フィードバック」の活動の評価を学習者に問うアンケートの結果である。なお,授業最終日は学習者が全員出席であったため,調査対象の学習者43名全員にアンケートを行うことができた。左の図4は「セルフ・フィードバック」に対する学習者の評価①である。評価する際の選択肢として具体的な項目を多数提示し,複数選択可とした。その際の選択肢は「楽14た。その際,学習者が記述した内容を肯定的に受け止め,誤りだった箇所を学習者に気づかせ,明確に指摘する明示的訂正や内省を促す問いかけを心がけた。FBシートにおける教師のコメントについて元田(2005)は「教師のコメント,とくに励ましの言葉は,学習者の上達感を促し,動機づけにつないでいく上で予想以上に重要な役割を持つのではないか」と述べている。わることで,活動を終えるときに学習者の手元に残る成果物となる。これは,可視化された学習者の学びの過程そのものであるといえるだろう。本研究におけるフィードバック活動は,学習者が自己と向き合い内省することを重視しており,他の学習者とその内容を共有するものではなく,成績評価に影響を及ぼすものでもない。そのため,学習者は他者の目を気にせず,自己の学びを振り返り,深めることに専念できる。その一方で,FBシートに教師のコメントが加わることにより,元田(2005)が上述するように学習する上での動機づけとなり,それが自宅で自習するのとは異なった意味合いとして,教室に来て学ぶ意義が生まれるのではないか。また,テストで満点を取った学習者に対しては,回答は正しかったが,回答する際に自信がなかった漢字に関して,それはどうしてなのか振り返りをし,記述することを促した。記述することによって,自身のものとして知識が定着していない漢字に把握することで,学習者が誤りやすい字であると認識し,今後の学習に活かされることを期待した。通常のテスト返却だけではフィードバックの余地がなくとも,このような自己に問いかける「セルフ・フィードバック」であれば,満点をとった学習者も時間を有効に活用にできるのではないかと考えたのである。4-1.実践結果4-1-1.アンケート結果1FBシートはただの学習の記録にとどまらず,学習者の自己分析に教師の問いかけが加4.実践結果図4 学習者評価①
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