注 52早稲田日本語教育実践研究 第3号/2015/51―523―2.アウトプット毎回ペアでのロールプレイや,ペアあるいはグループで自分の考え,経験,意見などを言う会話を行う。学生により日本語能力,知識,インターアクションの方法等が異なるため,様々な相手と話せるようにペアやグループを作り,お互いに学び合えるようにしている。そして毎回5項目の目標を設定し,それを意識させ会話をさせている。4項目は円滑なコミュニケーションのための目標で,1項目は様々な表現を使用するということである。実際の日常生活では,会話の目的を達成するための言語運用であるため,緊張感があり使い慣れた語彙,文型,表現を使う傾向があると考えられる。繰り返しのアウトプットにより習得が進むため,この活動では新しく習った語彙,文型,表現等,さらに日常生活で聞いた日本語,あるいは理解だけに留まっている日本語の使用を,強く勧めている。3―3.自己評価と他者評価評価活動は主に2種行う。一つは毎回学生が自身の会話でのインターアクションと相手のインターアクションを評価することで,用紙に記入するものである。評価項目は,設定した目標の5項目と,正確さ,話の流れ,適切な丁寧さ等5項目を加えた10項目である。学生はこの10項目に関して4段階の評価をし,良かったところ良くなかったところ等のコメントを書く。記入方式は,他の学生には言いにくい反省点や評価を書ける利点がある。もう一つはクラスメートのインターアクションを評価することで,口頭また用紙に記入するものである。口頭の場合は良かったところと良くなかったところを言わせる。これは,自分では気付かなかった異なった観点の評価をクラス全員で共有できる利点がある。3―4.学生の緊張感や不安を取り除くために学生が日本語で会話するときは,緊張しやすい。その緊張感や不安感を和らげるために以下のことを繰り返し伝えている。1)他の人と比較しないで自身の日本語の上達を考えること,2)相手が言ったことがわからないときは,気にせずに相手に聞けばいいこと,3)言いたいことが日本語で言えないときはお互いに助け合うこと,4)間違えから学ぶことができるので,間違えることを恐れずに様々な語彙,文型,表現を使うこと,である。4.おわりに本稿ではこの授業の趣旨と基本的な活動のみを紹介した。授業での反省点や,教室外の会話との繋げ方,学生の多様なニーズへの対応法等の改善に現在も取り組んでいる。1) この教材は,筆者他2名の日本語講師と話し合い共同で作成しているものである。参考文献Yano, Y., Long, M. H., & Ross, S.(1994) The effects of simplified and elaborated texts on foreign language reading comprehension. Language Learning, 44, 189-219.(こいけ まり,早稲田大学日本語教育研究センター)
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