(Yano,etc.1994)。この授業では,複数の精緻化されたインプットを同様の文脈の中で,また種々の文脈の中で提示しているオリジナル教材 1)を使用している。これは,学生のレ51小池真理/相手の状況や気持ちを配慮した会話を目指して科目名:相手と気持ちを共有して会話するレベル:初級1・2/中級3・4・5/上級6・7・8履修者数:29〜35名(2012年春〜2014年春)早稲田日本語教育実践研究 第3号 1.はじめに本稿で相手の状況や気持ちを配慮するということは,相手の年齢や社会的な立場等の背景,相手との関係等を考慮すること,さらにその時の相手の置かれている状況や気持ちを考慮すること,そしてそれらに考慮していることが相手に伝わるようにすることを表す。これには,例えば,聞き手である相手のことを考えて,わかりやすい流れで話すことや相手の様子を見ながら話すこと,また話し手である相手のことを考えて,話の内容に関心を持って聞き,適切に応答すること等も含まれる。そして,科目名の「相手と気持ちを共有して会話する」は,これらの相手へ配慮する気持ちを共有して会話するという意味である。2.授業の目標良好な人間関係を構築するためには,会話において円滑なコミュニケーションが必須であり,日本語を学習している学生にとっては日本語が上達することが同時に重要である。上達するためには,学生が日本語でのインターアクションで何ができて,何ができないかという情報を得ることが必要である。学生自身がそれらの情報を得る力を獲得できれば,効率よく上達できるであろう。そこで,この授業では以下の二つを目標とした。まず,相手の状況や気持ちを配慮して円滑なコミュニケーションができるようになることである。次に,教室内外の自身のインターアクションを客観的に振り返って,自分ができることとできないことを認識できるようになり,かつ他者のインターアクションを観察して,その観察したことを自身の会話に反映できるようになることである。3.授業の概要会話は,自分の言いたいことを話し相手の応答を聞き,さらにそれに適切に応答するという,産出と理解をほぼ同時に瞬時に行わなければならない。したがって,自身が行った会話を振り返ること,そしてインプットをし,繰り返しアウトプットして,それらの運用が自動化できるようになることが求められる。3―1.インプット言語習得を促進するためには精緻化されたインプットが使用されるべきだとされているベル差や多様なニーズへの対応を考えたものでもある。教材以外にも友達や教師の発話,日常生活やインターネットでの日本語等を広くインプットのリソースとして活用している。【実践紹介】相手の状況や気持ちを配慮した会話を目指して小池 真理
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