早稲田日本語教育実践研究 第3号
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3) 男女のことばは,ことばだけの問題ではなく,他者に推奨されるものではないので,学習1) 放送大学教育振興会(2005)『日本語中級からのスキルバランス』「男女の会話」のいくつ注 50あいづちなど,自然なやりとりになるように教師とボランティアが助言する。1回目と2回目は,それぞれ話の内容の大筋は変えずに人物の役割(親疎関係)を変えて丁寧に話す場面とカジュアルに話す場面の両方のスキットを書き,どちらかを発表する。3回目は目上の人を加えた少し複雑な状況にしてひとまとまりの自然な会話になるようにする。教師が指摘した誤解を招きそうなところを,学習者はグループで検討して発表に向けて練習する。発表後,学習者相互の簡単な評価,自己評価をし,教師はコメントを本人に伝える。学習者によるスキットの作成・発表は,あらたまった場面,くだけた場面での日本語の使用の機会になっている。スキットの創作には,今までに体験した状況の再現も含まれるだろう。実用的な会話がある一方で,学習者が表現したかった架空の状況など様々な会話が教室で披露され,学習者はお互いに刺激を受ける。スキット作成の過程で,学習者たちは相手の意見を聞き,歩み寄って折り合いをつけなくてはならない。意見が合わない場合もあるが,この過程自体が学習者同士のコミュニケーションの機会になっていると言える。3.改善すべきこと使用教材の内容が学習者に必要で,興味を惹くものかどうか,そして評価の方法もさらに検討する必要がある。また,モダリティを含む終助詞の使い方や男女のことばづかいの文末の違いをあまり整理していないため,混乱する学習者もいるので,丁寧体/普通体の変換の練習も含めて検討する必要がある。具体的で実践的な練習を行っていかなければならない。もう一つの問題点は受講者数が多いことである。様々な発表を見る利点もあるが,学習者への対応の時間が少なく,イントネーションや発音などの面でも一人一人に十分な手当てができないのは問題である。また,受講者に上級者が多いと中級の学習者が登録できないことがあるので,対象レベルの学習者が履修できるようなクラス分けが望まれる。かの課を扱っている。例えば「きれいだろ/きれいでしょ」「あっちにあるよ/あっちにあるわよ」(上掲書p.3,p.15)などの文末を確認し,男女両方の言い方を練習する。2) 上記1)の教科書の他に,富阪容子(2005)『なめらか日本語会話』アルク,国際学友会日本語学校(2000)『留学生の日本語会話』第4版 国際学友会,国立国語研究所(1993〜1997)日本語教育映像教材初級編「日本語でだいじょうぶ」,海外技術者研修協会(1991)「新日本語の基礎Ⅱ 復習ビデオ」スリーエーネットワークなどから選んで使用している。者が自身の判断で決める。男子の役になって会話の発表をした女子学生が何人かいた。早稲田日本語教育実践研究 第3号/2015/49―50(こいけ えみこ,早稲田大学日本語教育研究センター)

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