早稲田日本語教育実践研究 第3号
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(2)文型・表現の補充4―1で述べたように,今回のコースデザインによって,当初の課題であった総合日本語31徳間晴美・田川恭識・福池秋水/初中級日本語クラスのコースデザイン5.今後に向けた改善点学習者にとってはやや物足りなさが感じられていた様子であること,また,中級に向けてもっと語彙を増やす必要があるのではないかといった指摘もあった。「物足りなさ」を軽減させるためにできることは何かを考えてみると,教科書本文の短さを補うために作成した読解資料の扱い方に工夫の余地があると思われる。この読解資料は教科書の本文より長さの面でも難易度の面でも,ある程度読み応えがあるものであった。しかし,その位置づけと目的が学習者および授業担当者に十分明確に示せていなかったために,教科書の読解を補い切れていなかったようである。コーディネーションの中で,教科書本文との違いを明確に打ち出し,速読や要約の練習を行うなど扱い方を工夫することで,中級につながる読解力をより高めることができると考える。総合日本語4とのつながりを今後さらに意識して中級への橋渡しをしっかり行う必要があると言える。2との段差の解消はある程度実現できたと言える。今後は,総合日本語4とのつながりについて改善を行っていくことが課題である。以下で,2014年秋学期の授業に反映させた改善点について報告する。これらがどのように影響していくか,今後も継続して総合日本語3の授業運営全体を見渡していきたいと思う。(1)語彙の拡充語彙については,まずは教科書で扱われているものをしっかり理解することが大切であるため,学習者の予習に役立てることを目的とし,「語句予習ノート」を作成して冊子の形で渡すこととした。また,教科書で本文を扱う際には,「新しいことば」として挙げられているものを生かしながら,類義語や対義語,コロケーション等,語彙を豊かにするような扱い方をコーディネーターから提案していきたい。学習者が知っている語彙を引き出しながら,発展的に増やしていけたらと考える。4―1で述べたように,『中級へ行こう』で扱っている文型・表現は初級の復習も含まれていることもあり,初中級で学ぶ内容としては数が十分とは言い難い。教科書のシリーズとしては総合日本語3と総合日本語4の教科書の間に『中級を学ぼう 中級前期』があり,総合日本語4で『中級を学ぼう 中級中期』を扱っていることからも,『中級を学ぼう 中級前期』で取り上げられている文型・表現は可能な限り総合日本語3で扱うことが望ましい。2014年秋学期には,『中級を学ぼう 中級前期』で扱っている文法項目などから11項目を選定し,授業内容に盛り込むこととした。

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